仙台の奥座敷「秋保温泉」は、伊達政宗も愛した至極の温泉

秋保温泉は、仙台駅から車で30分ほどの所にあります。仙台市内でありながら中心部から西へ20kmほど行くと、名取川沿いにちょっと道が細くなってきたかも、と思った所に急に背の高いホテルや旅館の建物が見えて、温泉街に到着したことに気付かされます。

こんなに市街地から近い所に有名な温泉があるなんて、仙台に住んでいる皆さんが羨ましいです。

秋保温泉は、兵庫県の「有馬温泉」、愛媛県の「道後温泉」と並び皇室の御料温泉とされる「日本三大御湯」の一つとされています。また、同じ宮城県の「鳴子温泉」、福島県の「飯坂温泉」と共に「奥州三名湯(東北三名湯)」と言われています。

年間約90万人が訪れる東北の名湯を、是非みなさんにも楽しんでいただきたい!

その一心で、実家に帰る途中でちょいちょい東北旅行と楽しんできた、温泉ソムリエでもあるわたしが、今日は秋保温泉と、ここまで来たらついでに行っておきたい秋保大滝を紹介します。

ついでに、めちゃくちゃおせっかいな情報も含めて、がっつりご案内していきますよ。

秋保温泉ってそもそもどんな所?~有名だけど意外と知らない温泉の歴史~

開湯はとても古く、6世紀にまで遡るといわれています。

第29代欽明天皇が在位していた531~534年頃に、歴史上に登場します。

当時、小瘡(皮膚病)に苦しんでいた欽明天皇は様々な治療法を試しましたが、一向に回復しませんでした。そこで、遠く名取川上流に湧き出る「秋保温泉」の湯を都まで運ばせて沐浴すると、数日で病が治ったといわれています。その効能に感激した天皇は、「覚束な雲の上まで見てしかな鳥のみゆ(※)けば跡はかもなし」と歌を詠んでいます。(※「名取の御湯」が隠れています)

その効能を賞賛し、以後「秋保温泉」は「御湯」の称号を賜り「名取の御湯」と呼ばれるようになり、朝廷の国司の役人などが療養や湯治に訪れるようになりました。

秋保は、信濃(別所温泉)、犬養(野沢温泉)の湯とともに「日本三御湯」と称され、日本中から湯治客を集めました。

ちなみに「日本三御湯」は、順徳天皇(1197~1242年)が編纂した「八雲御抄(やくもみしょう)」という歌学・歌論を組織的に集大成した書物の中で取り上げられた温泉9湯のうち、温泉名の頭に「御」が付けられた温泉を指します。

戦国時代には伊達政宗が度々療養に訪れたともいわれ、江戸時代に入ると仙台藩主の湯浴み御殿が置かれて代々の藩主が訪れました。

雄大な自然と湯を兼ね備えた秋保温泉は、古くから保養の地として人々に親しまれてきた歴史を持っています。

秋保温泉の遊び方~その1:良質な温泉宿にオーソドックスに宿泊~

秋保温泉は、結構大きな温泉旅館がドン!ドン!ドン!と建っています。のんびりするなら、大きなホテルの施設を満喫しながら宿泊するのが一番です。

源泉は、宿ごとに複数保有していることが多く、そのため泉質も宿によって少しずつ異なります。秋保温泉はどこでも比較的優しいお湯なので、のんびり楽しむことができます。

また、大きな宿であれば複数のお風呂がありますから、到着後に、寝る前に、朝起きてから、と異なるお風呂を楽しむのもアリですよね。

★温泉データ

泉熱/24℃~60℃
泉質/ナトリウムカルシウム塩化物泉(施設によって異なります)
効能/リウマチ、神経痛、消化器病、皮膚病、切り傷、やけど、動脈硬化、冷え症、慢性婦人病、など

オススメの宿は、泊まらなくては体験しつくせないコチラです。

篝火の湯 緑水亭

名に冠しているとおり、夜になると露天風呂は篝火で照らされます。お風呂の雰囲気も最高ですし、お食事も地のモノを使ったお料理が自慢です。仙台って、海も山もあるので、何を食べても美味しいんです。朝ご飯はブッフェスタイルなので、和洋どちらも気分にあわせていただけます。お風呂付のお部屋もあります。

ホテル瑞鳳

秋保温泉の中心部にある「磊々峡」(らいらいきょう:どんな所かは後述しますよ)のすぐそばにある、大規模なホテルです。子供がいるご家族連れであれば、こちらの「全天候型屋内温水プール」はうれしい施設です。子供向けのウオータースライダーもあります。

また、お風呂も内湯とそれに続く露天風呂があり、露天風呂も全部で6種類あります。お風呂派男女入れ替え制なので、時間を見ながら制覇してもいいかも。
施設やサービスの充実ぶりは、大規模ホテルならではのものです。

もし大人の温泉リゾートが楽しみたいなら、お隣の「迎賓館 櫻離宮」がオススメです。全室温泉付きの客室ですが、大きなお風呂に入りたかったら本館の大浴場も利用できます。

写真提供:宮城県観光課

秋保温泉の遊び方~その2:素敵な温泉宿で贅沢に日帰り入浴~

秋保温泉の温泉旅館は大きい所が多いのですが、正直に言うと立派すぎて予算的に少しためらいを感じる施設もあります。

そういう時には、多くの温泉で「日帰り入浴プラン」があるので、そのプランを利用して楽しむのも良い手段です。

特に、昼食と休憩用の客室が入浴とセットになったプランであれば、日帰りながらも贅沢な時間を誰に気兼ねすることなくのんびりと過ごすことができますよ。

オススメの施設は、泊まっちゃうと予算オーバーになりそうで且つ日帰り入浴プランが充実しているコチラです。

伝承千年の宿 佐勘

宿としての歴史が古く、こちらの佐藤家の祖先は中世以来秋保の温泉を管理し、江戸時代初頭には仙台藩から湯守(ゆもり)に任命されています。歴史的の古いお宿と言ってもよいでしょう。

大きなお風呂に男湯にはサウナも併設されているます。女湯は、細かいことを言いますが、パウダールームの居心地が良く、ドライヤーもハイクラス仕様なので、ちょっといつもよりも髪やお肌のお手入れに力を入れたくなります。

日帰り入浴は「食事付き(個室会食場)」あるいは「食事と客室休憩付き」のみで「ちょっとお風呂だけ利用」ができません。そのため、のんびり過ごされるお客様しかいませんから、日帰りであってもゆっくりくつろげると思いますよ。どのプランも料金にはフェイスタオルとバスタオルが付いており、浴衣は有料(300円)です。

こちらはピンクリボンのお宿なので、お泊りなら「ピンクリボン宿泊プラン」の利用で貸切露天風呂が無料だったり入浴着無料貸し出しがあったりします。

華の湯

川沿い、山沿いに点在する4ヶ所の湯めぐりと源泉掛け流しの貸切露天風呂が人気です。

豊富な噴出量の自家源泉を持ち、もちろん源泉掛け流し100%です。

日帰り入浴でも、利用できるお風呂が多いところが魅力です。

日帰り入浴は「食事と個室付きプラン」あるいは「食事と広間休憩プラン」、「日曜日限定カレーバイキングプラン」、「日帰り入浴のみ」があります。個室付きプランは、お食事も3種類あるので、お好みで選択しましょう。

料金は、個室付きのプランの場合は平日と土日祝日で500円ほど差がありますが、平日はフェイスタオルのみ、土日祝日はプラスでバスタオルが付くので、土日祝日の割高感は少ないかもしれません。ちなみに、バスタオルが付いていないプランでも、300円で借りることができます。浴衣は有料(300円)です。

  • 昼食付き(個室付きプラン) 1人3,240円~(税込み)
  • 昼食付き(広間休憩プラン) 1人2,160円~(税込み)
  • 日帰り入浴プラン 1人 900円 (税込み)
  • 仙台 秋保 華の湯HP

岩沼屋

お風呂は大浴場、露天風呂にサウナまで。お湯はもちろん源泉かけ流し。しかもお湯の温度が3種類あるので、しっかり温泉を楽しめます。できれば、半身浴の後にぬるめのお湯と熱いお湯を交互に入って、温泉効果を高める入浴をしてください。

日帰り入浴は、「お風呂だけ利用」「食事付き」「食事付き(個室休憩あり)」「食事と客室休憩付き」があり、お食事はレベル感があるのでお好みで。なお、客室休憩付きは休日のみです。また、個室休憩や客室休憩が無いプランでは、広間などは用意されておらずロビーで休憩するしかありません。予算次第ですが、プランの選択が考え所です。

お風呂だけ利用(日帰り入浴プラン)と平日の松花堂弁当のプランは、フェイスタオルのみ、その他のプランはフェイスタオルとバスタオルが付いています。
仙台駅前から秋保温泉までの路線バス「仙台西部ライナー」を往復利用する場合には、予約時に連絡しておけば、帰りのバスが無料になる『仙台西部ライナー 運賃半額サービス』があります。

写真提供:宮城県観光課

秋保温泉の遊び方~その3:秋保大滝に行くなら、秋保温泉から行くのが便利~

秋保大滝は、是非行ってもらいたいスポットです。

秋保大滝は幅6m、落差55m、文字通りの大滝で、日本三名瀑の一つ・・・と仙台市ではアピールしていますが、「日本三○○」というのは実に微妙なもので、3つ目が大体微妙な位置づけです。ちなみに、世間一般的には「華厳の滝(日光)」「那智の滝(熊野)」「袋田の滝(奥久慈)」が「日本三名瀑」と言われています。ね、「袋田の滝」って微妙な感じがするでしょ?すごくきれいな滝だし、冬に凍ると壮観で素晴らしいのですが、全国区かと言われるとそうでもなさそうな気がします。

とりあえず、日本の滝100選にも選ばれていているのは確かですし、新緑の頃、紅葉のシーズンは素晴らしいので、是非足を運んでほしいです。

云われは古く、平安時代初期に慈覚大師が山形県の立石寺へ向かう途中、この地に留まり、不動明王を安置したそうです。その不動尊が「秋保大滝不動尊」です。

さて、どんな滝かと言うと、こんな感じです。

写真提供:宮城県観光課

なかなか迫力がありますよね。

滝見台をはじめ、滝つぼまで降りられる遊歩道もあります。マイナスイオンを感じながら、歩いてみましょう。ただし、滝つぼへ続く遊歩道は一部が急な階段になっているので、行かれる場合には足元に気を付けてくださいね。できれば運動靴などの方が良いと思いますよ。

さて、ここに行くためには車であれば駐車場がシッカリあるので問題はありませんが、バスを利用するには、少し困難なことがあります。

そう、バスの本数が少ないのです。

しかも、仙台駅から直接行こうとすると、バスは土日、祝日しか運行していない上に、1日2往復です。

他には、仙山線の愛子駅発のバスが秋保温泉を通って秋保大滝まで、平日は5往復、土曜日は3往復、日曜祝日は1往復あります。

これらを組み合わせて、しっかりプランニングして出かけてみましょう。

仙台市交通局HP
宮城交通HP

では、猛烈に行きたくなるような動画をどうぞ。

秋保温泉の遊び方~その4:ほかにも行きたい周辺スポット~

せっかく秋保温泉まで行ったら、ほかにも是非足を運んでほしいスポットを紹介します。

温泉街をフラフラするのもいいですし、ちょっと遠出してもいいですね。

1.磊々峡(らいらいきょう)

秋保温泉の入口にかかる覗橋(のぞきばし)を中心にして、上流と下流に約1km続き、その深さが20mにも達する渓谷です。

このあたりの名取川は川幅が急に狭くなり、両岸の絶壁を削り取るように流れ、その流れに浸食された鋭い角を持つ巨岩がおおいかぶさるように迫ってきます。

覗橋から下流側に向かって渓谷沿いに約700mの遊歩道が続き、「八間巌」「鳴合底」「鬼面巌」などの奇勝や「時雨滝」「三筋滝」などの滝が織りなす美しさを楽しめます。

新緑の頃や紅葉の時期には、その色が水面に映えて一段と美しい景観が見られます。

写真提供:宮城県観光課

2.主婦の店「さいち」

秋保温泉の中にある地元のスーパーです。が、ココの「おはぎ」が想像を絶する人気なんです。

平日は約5,000個、お彼岸の時には約20,000個を一日に売り上げるそうです。

その味は、昔ながらの素朴な味です。

決して、気取った感じでは無く、高級店のソレでもありません。そのため、よくある観光サイトでは「そんなに人気になる理由が理解できない」風の意見が出て、賛否が分かれます。

田舎育ちのわたしにとっては、おばあちゃんが昔作ってくれたおはぎを思い出すような商品です。

無添加なので、購入したその日のうちに食べないと硬くなってしまいますから、遠方へのお土産には適しません。買ってきてもらったり、通販で取り寄せができない程度感がイイので、行ったついでにおやつを買うぐらいの期待感で楽しんでほしいと思います。

おはぎは1つ108円です。2個パック、3個パックなど、パック詰めされて売られていますよ。

現地で買いそびれた!時間が無かった!という人には、仙台駅1階にある「食材王国みやぎ」内で、木・金・土曜日限定で午前11時から販売しています。こちらも数量限定なので早めに買いに行きましょう。

わたしは旅行をすると、国内外に関わらず、必ず地元のスーパーに足を運ぶようにしています。それは、地元で食されている物や採れる物を見てみたいという好奇心を満足させるためです。お惣菜などをみると、現地の家庭で食べられているものを見られるので、とても楽しいですよ。みなさんも、現地でしか売っていない「何か」を探してスーパーに行ってみませんか?

ここでは、仙台味噌やずんだあんなどの商品のほか、「筋子の手巻き寿司」なんて見るとグッときます。

3.秋保工芸の里

伝統工芸の職人たちが、9つの工房で仕事を行い、ここで生活をしています。こけしや箪笥など伝統技術を守り継承する職人さんの作業姿と、丹精こめた作品の数々を見る事が出来ます。

ここでは、こけしの絵付けやお箸の漆塗り、草木染めなどの体験ができます。体験には必ず予約が必要なので、下記のHPを参照して興味のある工房に予約してから向かいましょう。

秋保工芸の里 仙台市HP

写真提供:宮城県観光課

4.ニッカウヰスキー 仙台工場(宮城峡蒸溜所)

ニッカウヰスキーは、北海道・余市で1つ目の蒸溜所をスタートさせてから30年後に、新たな蒸溜所を建設するために適した土地を探し始めました。そして探し当てた土地が、広瀬川と新川の良い水に恵まれた、山形県境にも近いこの土地でした。

ニッカウヰスキーの余市蒸留所は有名ですよね。そことは違う製法で異なる味わいのウィスキーを作ることが、この蒸留所の目的でした。

Photo by nimame – 宮城峡蒸留所

蒸留所内は無料で見学ができ、案内係の方がウイスキーの製造工程や歴史について説明してくれます。もちろん、試飲も3種類までなら無料でできます。見学は約70分で、人数が多い場合には事前に予約をしておくと安心ですよ。

もっとたくさん試飲してみたい人は、ブレンダーになった気分で宮城峡蒸溜所で造られたいろいろなウイスキーのテイスティングを、講師の説明を聞きながら楽しむことができます。こちらは有料で必ず予約が必要です。見学と試飲で90分、参加費は1,000円です。

予約は次のサイトからどうぞ。

ニッカウヰスキー宮城峡蒸溜所HP

Photo by yari hotaka – DSCF1219

秋保温泉へのアクセス

仙台駅から秋保温泉までは、路線バスのほか各宿によって送迎バスがある所もあります。

上手に利用すると、交通費や時間の節約になるので、利用するお宿に確認・予約をしておくと良いでしょう。

また、秋保温泉街の散策には荷物が邪魔になるケースもありますよね。そんな時には宿泊する宿に預けることもできますが、宿泊しない場合には「秋保・里センター」を利用するのも良い方法だと思います。

秋保・里センターには、秋保温泉の観光案内所もあります。わからないことは、何でも聞いちゃいましょう。

コインロッカーやレンタサイクル、足湯(4月~11月の土日祝日のみですが、源泉が週替わりという芸の細かさです)まであります。コインロッカーは100円ですが返却式なので事実上無料ですし、レンタサイクルも無料です。フリーWI-FIも完備だし、カフェやトイレもあるので、安心の施設です。

まとめ

ここまで仙台の奥座敷、秋保温泉と秋保大滝、またその周辺お立ち寄りスポットをご案内してきました。最後にきちんと整理しましょうね。

  1. 秋保温泉は「日本三御湯」にも名を連ねる、古くて由緒ある名湯。
  2. ゆっくり寛ぐには宿泊がもちろんオススメだけど、どこの宿泊施設でも設定があるリーズナブルな日帰り入浴プランを利用するのも有効。
  3. 秋保大滝は、滝の上からも下からも見られる日本100名滝にも数えられる名瀑。新緑や紅葉シーズンは特におすすめ。
  4. 周辺スポットには、自然を満喫できる磊々峡のほか、工芸体験ができる秋保工芸の里、工場内を見学できる宮城峡蒸留所をはじめ、多彩なお立ち寄り施設がたくさん。

訪れる季節は、若葉の5月や紅葉なら10月下旬~11月上旬がおすすめです。特に紅葉は、「秋保大滝」や「磊々峡」で見るのがいいですね。

また、冬の積雪量は多くはないけれど12月下旬から2月までは、積もるほど振る日もあります。もし車で行くなら、冬タイヤ必須ですよ。

色とりどりの季節に露天風呂もいいですが、水墨画のような色合いの中で静かに露天風呂に入るのもの良いのではないでしょうか。

東京からであれば仙台まで新幹線で約2時間、そこからタクシーであれば約30分、送迎バスや路線バスなら40分~50分ほどで到着です。

わたしはこの冬、青森に帰省するときに途中で仙台に立ち寄ろうと思っています。その時には、秋保温泉で雪が降ることを楽しみにして雪見露天風呂と洒落込むか、松島の牡蠣小屋でたらふく焼き牡蠣を食べるか悩んでいます。この記事を書いたら、秋保温泉にしようかなぁ~って気分になりました。

それでは、一足先に行ってきます!みなさんも、後から来てね。