日本の一番北に位置する北海道。そのほぼ中央にある旭川市は、人口およそ34万人の都市です。ここに、人口900万人を超える大都市東京にある上野動物園を抜き、入場者数が全国1位になった動物園があります。
それが「旭川市旭山動物園」です。
決してアクセスが良いとは言えない動物園が、なぜそんなに人気なのか。その秘密は、「行動展示」という動物本来の生態を再現する試みによって、“動物たちの生き生きしている姿”に出会えることにあります。
従来の動物園のイメージをくつがす、旭山動物園の魅力について、ご紹介します。
Contents
旭山動物園で出会える人気の動物たち
旭山動物園には、とくに珍しい動物がいるわけではありません。それでも、いちど訪ねた人に、また来たい!と思わせる魅力があります。その理由は、従来の動物園のイメージをくつがえす、生き生きとした動物たちの姿にあると思われます。
そんな旭山動物園でも、とくに人気のある動物たちをご紹介します。
ホッキョクグマ
まずは「ホッキョクグマ」。豪快にプールに飛び込む姿が人気ですが、これはお客さんの頭が、ホッキョクグマのエサであるアザラシに見えるように、プールが設計されているからだそうです。
水の中のホッキョクグマは、とっても気持ちが良さそう。
白くて美しい毛が水になびく姿も、すぐ近くで見ることができます。目の前をホッキョクグマが泳いでいるなんて、なんだか不思議な体験です。
ペンギン
それから空飛ぶ「ペンギン」。
水槽の下から泳ぐ姿はまるで空を飛んでいるように見えます。陸の上ではヨチヨチ歩きのペンギンが、水中で泳ぎはとっても速くてびっくりです。
冬には、雪の上を歩く“ペンギンの行進”が大人気です。
歩くのは運動不足解消のためだそうですが、雪を食べたり、おなかで滑ったり、とっても愛らしい姿を見ることができます。
アザラシ
愛嬌のある「アザラシ」も人気者です。円柱のプールを通り抜けながら、楽しそうに泳ぐ姿は、いつまで見ていても飽きません。
ずっと見ていると、ときどき目が合ったりして。人間が見ているつもりで、じつはアザラシに見られているのかもしれません。
カバ
水中の「カバ」が見られるのも旭山動物園ならでは。
3mの深さがあるプールで、ジャンプしながら移動する姿はとっても気持ちよさそうです。プールの下には透明な部分があって、足の裏も見ることができます。
巨体のわりに小さな可愛らしい足の裏!ここでしか見られないアングルです。
オオカミ
ワイルドな佇まいが人気なのが「オオカミ」です。
鋭い目つき、堂々とした立ち姿は、犬とは違う野性味を感じます。園内放送に呼応して、遠吠えする姿も見られることもあります。
群れのなかで厳しい順位あるオオカミ、常に一番高い位置をキープしているリーダーには、威厳すら感じます。
旭山動物園で出会える、北海道ならではの動物たち
手つかずの大自然が残る北海道、多くの野生動物が生息しています。
そんな北海道ならではの動物たちにも、旭山動物園では出会うことができます。
エゾヒグマ
まずは、北海道だけに生息する「エゾヒグマ」。
立ち上がると2mもあるという巨体!やはり迫力があります。生態系のトップにいますが、じつは雑食性。ドングリなんかも大好きです。
最近は人間との距離が問題になっていますが、ヒグマの生態を知って、共生の道を探る取り組みが進められています。
エゾシカ
つづいて、「エゾシカ」。北海道ではドライブしていても見かけるほど、身近な野生動物です。
オスは立派な角を持っていますが、年に1回生え変わります。春先には、角が落ちたシカを見られます。
また6月ごろにはメスが出産をするので、可愛いベビーにも会えるかもしれません。
キタキツネ
それから「キタキツネ」。可愛らしい姿に人気があります。冬はふわふわの冬毛ですが、夏はほっそりしています。
旭山動物園では、たくさんある小窓があって、自然のなかで観察している気分になれます。でもエキノコックスという寄生虫がいるので、野生のキツネに近づいたり、エサをあげるのは厳禁だそうです。
タンチョウ
美しいツル「タンチョウ」。北海道では釧路湿原などで、野生の姿を見ることができます。
頭の上の赤い部分が特徴で、飛ぶ姿も美しく、多くの写真家がその姿を撮りに訪れます。
一時期は乱獲によって絶滅したと考えられていましたが、地域の人たちの努力によって1,000羽を超えるまでに数を回復しているそうです。
オオワシとオジロワシ
最後に、堂々とした姿がカッコいい「オオワシ」と「オジロワシ」。旭山動物園では、大きなバードゲージで自然に近い姿を見ることができます。
オオワシは羽を広げると2m近くなり、黒と白のコントラスト、くちばしの鮮やかなオレンジが美しい鳥です。オジロワシはオオワシより一回り小さいですが、尾の部分が白く、こちらも堂々とした姿をしています。
越冬のため北海道にやってくる、冬を告げる鳥です。
旭山動物園では、地元の生きものたちの飼育展示にも力を注いでいます。それは、どんな種類の生きものが、どのように暮らしているかを知ってもらい、自然を大切にすることの意味を伝えるためだそうです。現在、北海道でも野生動物と人間との共生に、いろいろと問題が起こっています。
例えば、増えすぎてしまったエゾシカによる自然破壊や、農作物被害を防止するため、毎年10万頭以上が駆除されています。旭山動物園ではこうした問題に向き合い、何を大切にすべきなのか、伝える努力もしているのです。
赤字から日本一の動物園へ。旭山動物園復活の物語
北海道屈指の観光地として人気の旭山動物園ですが、一時は赤字のため閉園がささやかれたこともありました。
それが今では日本中、そして世界からも多くの人が訪れる動物園なったのです。その復活劇は、ドラマや映画にもなり、大変話題になりました。
きかっけは、“伝えるのは、命”という動物園の原点に戻って立て直しを図ったこと。そこから生まれた「行動展示」という取り組みが、旭山動物園の魅力となっていったのです。
飼育下という限られた環境で、動物たちの生態を生き生きと見せるにはどうすれば良いか、動物のことを一番知っている飼育員たちが、アイデアを出し合い、それを次々に実現していったそうです。
今でも年に一度、閉園期間中に、温めてきたアイデアを実現させるべく、スタッフみんなで、獣舎を改修したり、手作りの案内ボードを作成したりしているそうです。
そうした想いや努力が実を結び、多くの人を惹きつけているのですね。
そして今、旭山動物園は新しい取り組みとして、「共生飼育」を進めています。ちがう種類の動物を、同じ場所で飼育するのだそうです。
自然界では、多くの生きものたちが同じエリアで暮らしているもの、それを再現しようというのです。
今のところ、マルミミゾウ×ペリカン、クモザル×カピバラ、テナガザル×キョン、アザラシ×ウミネコの共生飼育にチャレンジしています。動物たちはお互いを意識しつつも、適度な距離を保ち、単独飼育の時とは、あきらかに違う行動をするそうです。
人間も、自然の調和とバランスに学ぶことがあるはず、と園長は話しています。
今後はニホンザル×イノシシ、オランウータン×ボルネオカワガメなど、新しい組み合わせの共生飼育も計画しているそうです。
新たなチャレンジを続ける旭山動物園、さらなる進化が楽しみです。
旭山動物園のおすすめのお土産5選
動物たちにたっぷり癒されたあとは、ぜひお土産ショップものぞいてみてください。魅力的なお土産がそろっています。
カプセルフィギュア
「個人的に一番のおすすめは、「カプセルフィギュア」です。」
世界的メーカー海洋堂が作った動物たちの精巧なフィギュアが、ガチャガチャという機械から出てきます。どの種類が出てくるかのドキドキ感も楽しめます。自分用にも、お土産にも、おすすめです。
アニマルクッキー
そして可愛らしい「アニマルクッキー」も、おすすめです。どれも可愛らしくて選ぶのも大変、食べるのももったいないですが、お土産には喜ばれると思います。
旭山手ぬぐい
日本らしいお土産には、「旭山手ぬぐい」がおすすめです。1枚1枚、職人さんの手で染められているそうです。デザインが素敵なので、額に入れてインテリアとして飾るのもOK。
イラストグッズ
人気絵本作家のあべ弘士さんのイラストグッズもおすすめです。旭山動物園の元飼育員という異色の経歴の持ち主で、旭山動物園内の案内表示や壁画は、彼の作品です。
インパクトのある動物たちのイラストは、旭山動物園の世界観を伝えるのに一役買っています。クリアファイルやストラップ、絵ハガキなど、色々なグッズが販売されているので、お気に入りを探してみてください。
生チョコサブレ「蔵生」
最後におすすめしたいのが、生チョコサブレ「蔵生」。しっとりとした不思議な食感で、一度食べたら、やみつきになります。旭川土産としても定番の一品です。旭山動物園限定のパッケージで購入できます。
旭川は食の宝庫。北海道のソウルフード&酒造をご紹介
海の幸も、山の幸も、どちらも楽しめる旭川。
旭山動物園の帰りには、ぜひ旭川の街にも寄ってみてください。旅の記憶に残るような、美味しいものにきっと出会えると思います。
まずは北海道のおすすめソウルフードを3つ、ご紹介します。
ジンギスカン
ひとつめは、「ジンギスカン」。ラム肉を専用鍋で焼くもので、北海道民のソウルフードでもあります。
「毎年桜の季節には、MYジンギスカン鍋でお花見するのを、楽しみにしています。」
何店舗かありますが、地元でも人気の大黒屋というお店がおすすめです。ここの生ラムはまったく臭みがなく、一度食べたら忘れられない美味しさ。
生ラムのほかにも、ハーブ生ラムやショルダーステーキなど、色々なラム肉を楽しめます。
旭川ラーメン
2つめは「旭川ラーメン」。濃厚な醤油ベースのスープが特徴で、日本中にその名が知られています。
「梅光軒、山頭火、青葉、すがわら、天金、一蔵など有名店もたくさんありますが、個人的なおすすめは、「蜂屋」です。」
魚介のだしと焦がしラードが特徴で、好き嫌いがはっきり分かれるラーメンでもありますが、ぜひ挑戦してみてください。
お店によって、色々な味が楽しめるので、何軒かはしごするのも楽しいかもしれません。
炉端焼き
魚介や野菜を炭火で焼いたもので、北海道の旬の食材を楽しむことができます。ホタテやツブ貝、ホッケ、シシャモ、ニシンなどの海の幸、アスパラなど旬の野菜をぜひ注文してみてください。
塩辛をのせたジャガイモ、冷凍した魚をそのまま食べるルイベ、マヨネーズをつけて食べるコマイ、ラーメンサラダなど、郷土料理も合わせてぜひお試しを。
「バンガロー」、「炉端のユーカラ」というお店がおすすめです。漁師の番屋のような独特のお店の雰囲気、きっと特別な時間を過ごせると思います。
そして、美味しい水があるところには、美味しいお酒も。
旭川には「男山酒造」、「高砂酒造」、「大雪乃蔵」の3つの酒造があります。
販売所も併設しているので、試飲しながら、お酒を選ぶことができます。
最近は、海外でも人気が出始めた日本酒、お土産に買っていく人も多いようです。
工場見学ができるところもあるので、ぜひ足を運んでみてください。
「旭川市旭山動物園」のアクセス情報、入館料など
車でのアクセス
- 旭川空港から道道68号線、道道67線経由で約20分
- 高速道路「旭川北IC」から約25分、「旭川鷹栖IC」から約35分
旭山動物園無料駐車場約500台、有料駐車場約1500台
バスでのアクセス
- JR旭川駅東口から、旭川電気軌道「旭山動物園線」に乗車 (30分間隔で運行、乗車時間約40分、料金440円)
- 旭川空港から、旭川電気軌道「旭山動物園線」に乗車 (1日2便運行、乗車時間約35分、料金550円)
入園料
- 大人(高校生以上) 820円
- 小人(中学生以下) 無料
開園時間
- 夏期開園期間 9:30~17:15 (最終入園16:00まで)
- 冬期開園期間 10:30~15:30 (最終受付15:00まで)
定休日
年末年始(12/30~1/1)
※休園日は年によって変わります。ホームページで確認できます。
まとめ
動物たちの生き生きした生態を伝えるため、新たな挑戦をし続けている「旭山動物園」。きっと大人もワクワクできる魅力がつまった動物園です。
訪ねる前にお伝えしたいポイントがいくつか。
旭山という名前のとおり、園内にはアップダウンがあります。園内を移動できるカートもありますが、歩きやすい靴で行くことをおすすめします。また冬の時期は、靴に滑り止めの装備が必須です。
そして、平日でも混雑が予想されるので、チケットは事前に旭川市内のホテルで購入しておくこと、正面入り口よりも空いている西門から入場することもおすすめします。
最後に一番お伝えしたいポイントは、ぜひ時間に余裕をもって訪ねて欲しいということです。
2時間もあればすべて回れる広さですが、動物たちが元気に動き回っているので、ついつい長居をしてしまい、滞在時間は長くなりがちです。
「時間を決めず、朝からゆっくり動物たちとのひとときを過ごすことをおすすめします。」
東京生まれ、栃木育ち、仕事で北海道にも住んでいました。旅行先では、地元の人の生活を知りたくて、必ず市場を訪ねます。毎回、新鮮な発見があって面白いです。地域の魅力を伝えるイベント企画などの仕事をしていたので、知られざる日本の魅力をもっとお伝えしたい!と思っています。