春夏秋冬一年を通じて国内外から訪れる人々が絶えない古都・京都は、我が国を代表する国際観光地です。
春は桜と新緑、夏は暑さを忘れさせる風鈴の根と水辺の景色、秋は山々や家々の甍を彩る紅葉、冬は寺社仏閣の雪景色と、その四季折節の美しさは「日本一の都」と表現しても過言ではありません。
しかし、一口で京都と言ってもその名所旧跡や寺社仏閣の多さは膨大な数に上ります。
東本願寺、清水寺、平安神宮、京都御所、金閣寺、二条城、八坂神社、銀閣寺、知恩院、三十三間堂、東寺、大原三千院、嵐山などなど。名前を挙げただけでもどんどん思い浮かんで来て、限られた時間の中で効率的にどこへどう行けばいいのか、きっと思い悩む事でしょう。
その数多い京都の名所の中で「お稲荷さん」へ行ってみませんか?
みなさんの住む地域にもある稲荷神社、その総本宮とされるのが、これからご紹介する京都の「伏見稲荷大社」です。
今回も神奈川県在住で旅好きの私・加藤学が、小学校の修学旅行以来という京都へ、そしてもちろん伏見稲荷大社へ足を運んでまいりました。
Contents
実に36年ぶりの京都へ…
2017年12月5日、小田原駅を8時08分に出発の新幹線ひかり号に乗車しちょうど2時間。ほぼ定刻どおりに京都駅へ到着しましたが、市内各名所へアクセスする駅前の市バス乗り場は、12月でありながらどこもかしこも長蛇の列。
超満員のバスを2本見送った後、3本目のバスにようやく乗ります。

この後徒歩も含めて、平安神宮~祇園~八坂神社~清水寺~三十三間堂と回っているうちに、短い師走の太陽も西へ傾き、再び京都駅からJR奈良線に乗って、伏見稲荷大社に程近い今宵の宿に到着した時は16時直前。
しかしこの時間にも関わらず伏見稲荷大社はJR稲荷駅からこれまた人、人、人…賑わいは夜まで続きました。
でも私にとっては小学校6年生の修学旅行の時、1981(昭和56)年以来、実に36年ぶりの京都です。その感慨に浸りつつ、伏見稲荷大社の楽しみは明日にして早々に休みました。
餅が空を飛んで稲荷大社が始まった!?
周囲の大半を山に囲まれた京都の冬の一日は、「京の底冷え」と呼ばれる厳しい冷え込みで始まります。しかしこの寒い朝にも関わらず伏見稲荷大社の前には早くも人の姿が。
人々の吐く白い息の向こうには、快晴の青空に映える朱色の第一鳥居が大きく出迎えます。
実はこの朝早い時間に神社を訪れることが密かな人気を呼んでいるとか。
昼間は大混雑する伏見稲荷大社、朝早い時間ならば人もほとんどいないため、心静かにお参りできるからでしょうね。
大社の本殿へは、JR稲荷駅から道路を渡って第一鳥居をくぐり、そのまま参道を進むこと約2分で到着します。
但し稲荷駅前の道路は車がひっきりなしに通行するので、渡る時は注意しましょう。
8時を過ぎた頃から、JR稲荷駅から稲荷大社界隈は大勢の人々であっと言う間に賑わってきます。


京都府伏見区深草にあるここ「伏見稲荷大社」は、日本全国に約3万社以上ある「お稲荷さん」つまり「稲荷神社」のトップに立つ総本宮とされており、近畿地方の神社やお寺の中では最も多くの参拝者が訪れています。
ーその歴史は古く約1300年前の奈良時代に遡ります。
説によれば、現在の京都府南部を領域として治めていた「山城国」の権力者である「伊侶巨秦公(いろこはたのきみ)」が、ある時ふとしたことから餅(もち)を的にして矢を放ったところ、その餅は白鳥となって空を飛び、近くの伊奈利山(稲荷山)に下りました。
そこに稲穂が実ったことから、伊侶巨秦公はこの稲荷山にある3つの頂上に稲荷神を祀り、これが現存する三ノ峰、二ノ峰、一ノ峰になったのが始まりとされています。

現在、稲荷神社は全国各地の津々浦々にまで広がり、五穀豊穣をはじめ商売繁盛、学業成就の守り神として多くの人々から信仰されています。
伏見稲荷大社に修学旅行生が多く見られるのもわかりますね。


山奥の霊界へと続く「赤いトンネル」!
人々が手を合わせる本殿から3分ほど奥へ進むと…いよいよ現れました。
数限りない朱塗りの鳥居がずらっと連なる「千本鳥居」です。
トンネルのような鳥居をくぐりつつさらに奥へ進むと…鳥居は左右二手に分かれて尚も奥へと続きます。
この伏見稲荷大社の代表的な名所と呼べる場所でしょう。
右側通行で「右から入って左から出る」のが、この千本鳥居のルールです。


私の前にいた男子高校生。
いちばん最初の鳥居から、歩きながら必死に数えていました。
「いち、にぃ、さん、しぃ、ごぉ、ろく、しち、はち、くぅ、じゅうぅ、じゅういち、じゅうにぃ、じゅうさん、じゅうしぃ、じゅうごぉ、じゅうろぉく、じゅうしぃち、じゅうはぁち、じゅうくぅぅ! にぃじゅうぅぅ!! ああ疲れたぁ!!!」
全部数えることができたら、それは「神ワザ」に等しいでしょう。
広大な面積の伏見稲荷大社の中でも千本鳥居のあるこの場所は、稲荷大神のご降臨された山の入口であり、神様のいる「霊界」へ続く門として、このように多くの鳥居が建ち並んでいるのだとされています。
「霊界」と聞くと何か恐れを感じますが、ここは神様の領域です。身も心も清められようという思いで過ごしましょう。
名称は「千本鳥居」でありながら、実際には全部で1万基以上あり、現在も増築されています。
時間があれば稲荷山の頂上へ登ってみよう
左右に続く千本鳥居は「奥社奉拝所」の手前で終わりますが、時間と体力に余裕のある方は、ここからさらに稲荷山頂上へと続く鳥居の登山道を、最高峰の一ノ峰(標高233m)まで登ってみましょう。
片道約1時間弱、途中には茶店があって休憩もできます。
頂上からの京都の眺めは最高でしょう。
ここで…お稲荷さん豆知識
「お稲荷さん」というと私たちはどうしても、あのジューシーな油揚げに包まれた「いなり寿司」を思い出してしまいますね。
…稲荷神には「神の使い」がいますが、それは狐(キツネ)です。
そういえば全国の稲荷神社の前には「お狐さま」が左右両側に置かれていますね。


稲荷神のお祭りの際には、お神酒と赤飯そして五穀豊穣の証であるお米で作ったお寿司と、それに使用する「油揚げ」が供えられます。
これが、あの「いなり寿司」の発祥とされているのです。
これからいなり寿司を頂く時は、まずは稲荷神さまに手を合わせてから頂きたいですね。
私のお願い、どうか軽い石でありますように…
千本鳥居をくぐり抜けるとそこには「奥社奉拝所」があります。
そこからさらに奥の突き当たりの石垣の前に「おもかる石」と書かれた木札があり、左右2つの石燈籠の上に「円い石」が置かれています。
まずは心の中で願い事を唱えてから石を持ち上げてみましょう。
石を持ち上げた時に、想像以上に石が軽かったら「願い事が叶う」と言われ、想像以上に重かったら「願い事は叶わない」と言われています。

ちなみに写真の彼女たちからは「軽い~」という声は聞こえてきませんでした。
どんな願い事をしたのでしょうか…。
私も持ち上げてみましたが、「軽いとは言えない」石でした。
私自身の「名誉」のために、「今日と明日は晴れますように…」という願いは叶いました。
伏見稲荷大社自慢2つの名物グルメ
きつねせんべい
まずは「きつねせんべい」でしょう。
稲荷神の「使い」である狐(キツネ)の顔をかたどった、お面のような形をしたせんべいで、ぱりっと食べてみるとほのかに味噌の香ばしさと甘さがする、どこか懐かしい味です。
販売する店によって違いますが、「きつねちゃん」「子ぎつねちゃん」「大面」「小面」「ちっちゃいきつねせんべい」などと名前が付けられています。


ちなみに上の写真は「子ぎつねちゃん」です。
縦が12cm、横が9cmとかなり大きいので、豪快にばりっと噛みつきましょう。
スズメの丸焼き
次にご紹介するのは、何と「スズメの丸焼き」です。

びっくりする方も多いかもしれませんが、「五穀豊穣」の神様である稲荷神にとって、昔から稲を食い荒らす雀(スズメ)は、退治しなければならない大敵とされてきました。
そこから生まれた名物グルメなのです。
現在、この伏見稲荷大社周辺では、京阪線「伏見稲荷駅」から続く「神幸道」(裏参道)を約3分歩いた所にある「お食事処 稲福」をはじめ3店舗で、スズメの丸焼きを提供しています。
「スズメの丸焼き」を食べたことのある人の話では、毛や羽をむしり取って串刺しにしたスズメを、網の上で丸焼きにし、山椒をふりかけて頂きます。
適度に脂が乗り、最も美味しいのは「頭の部分」だそうです。
これがその実物写真です。

ちなみに丸焼きに使用するスズメは、近所の公園などで飛んでいるスズメではありません。
またスズメの猟には免許が必要で、許可を受けた人が、許可された場所でなければ捕獲できないスズメを使用しています。スズメの猟は毎年11月に解禁となるため、店での提供も11月中旬から2月中旬までの期間限定の味となります。
一度お試しください。

国際人気観光スポット4年連続第1位!!


国際観光都市・京都の中にあって、ここは「Fushimi Inari Taisha」
伏見稲荷大社は2014年から「外国人に人気の観光スポット」の第1位に輝いています。
そして12月7日夕方、京都を去る時刻が近づいてきました。
最後に足を運んだのは「京都タワー」。
そこから…伏見稲荷大社が見えました!!! 京都タワーから南西へ約2.5km。

高さ100mの展望台からの眺め。ガラス越しの写真なのでややぼやけていますが、ビル群の向こう、あの朱色の鳥居と神社の建物がお分かり頂けるでしょうか…。
最後はJR京都駅のガラスに映る夕暮れの京都タワーを…。

旅のまとめ
小学校の修学旅行以来、実に36年ぶりに訪れた京都。
その36年前の修学旅行の時にも訪れることのなかった伏見稲荷大社に、今回初めて足を運びました。
朝早くから賑わう境内や界隈、薄暗い山の奥深くまで続く鳥居の列、きつねの顔をしたおせんべいにも、スズメの丸焼きにも感じられたのは、京都の人々の稲荷神への厚い信仰心です。
私の地元・神奈川にも多く存在する稲荷神社ですが、そのすべてのルーツは京都にあった…これで地元のお稲荷さんにも、お寿司のお稲荷さんにも見方が少し変わったような気がします。
京都には多くの名所旧跡・寺社仏閣がありますが、ここだけでも京都の丸1日を過ごせる、まさに新発見の伏見稲荷大社でした。
アクセス情報
伏見稲荷大社へのアクセス
- JR京都駅から奈良線で約5分(140円)、「稲荷」駅下車。徒歩すぐ第一鳥居、2分で大社本殿。(稲荷駅前の道路は車の通行量が多いため、渡る時は充分注意)
- 京阪線「伏見稲荷」駅から神幸道(裏参道)を徒歩約5分で大社本殿。
そして、今回私が宿泊した宿もご紹介します。
京町家 INARI
- JR京都駅から奈良線で約5分(140円)、「稲荷」駅下車。正面の伏見稲荷大社に向かって左へ徒歩約45m。(昼間は甘味処として営業しておりスイーツが楽しめます。水曜日休業)
- 1泊17000円(チェックイン時に前払い、宿泊者は独自に手続きを行います。朝食付き)
- インターネット使用可、駐車場なし、チェックインは17時までにお願いします。
- (TEL)+818036980123 または、075-574-7898。

旅行大好きなアラフィフ男子。生活拠点は国際観光地として有名な神奈川県箱根町、訪れる人々から道や名所について尋ねられる事も珍しくありません。観光名所はもちろん、その地の自然や地理、歴史などの話も含めて、皆様に楽しく伝えられればと思います。