旅好きの私・加藤学はこれまで、全国47都道府県のうち40都道府県の土を踏みました。日本列島の東西南北さまざまな名所をここでも紹介してきましたが、意外なことにまだ7道県の土を踏んでいないのです。
その「栄えある」40県目となったのが山形県。東北地方にも何度か足を運んでいながら、唯一足を踏み入れていない県でした。
羽黒山頂上へと続く急な石段、ここは世界に高く評価された名所なのです。
歴史深い五重塔に高くそびえる巨木、深い森林につづく長い長い石段、そして登り切った山頂に広がる世界…。ここへ来ればきっと心も体も清められるでしょう。
長い石段をがんばって登ります。いざ出発!!
Contents
- まずは東京から上越新幹線で新潟へ
- 車窓からは青い日本海が…
- 鶴岡駅からはバスに乗り、羽黒山へ
- 羽黒随神門…ここからは神様の領域へ
- 羽黒山の深い森へ足を踏み入れる
- 静かな滝音に心安らいで…
- 太くて大きな羽黒山の「お爺さん」
- 森の中に気高くそびえる羽黒山五重塔
- いよいよはじまりました、長い長い石段!!
- 羽黒山は苦行を積む修験の地
- 樹齢500年の杉並木と共に山奥へ…
- ここからが正念場!! 羽黒山で最も急な坂
- 絶景と味に疲れも吹き飛んだ!!
- 人々をもてなす茶店の努力を感じて
- 世界最高級ガイドブックも絶賛の羽黒山
- あの有名人も訪れた羽黒山
- さあ最後の急坂、がんばろう!!
- ほら、頂上まであと少し!!
- 神々しさあふれる羽黒山頂上へ
- 羽黒山の霊気に自分を見つめ直す
- 羽黒山を開いた皇子も安らかに…
- 山上にひっそりと立つ松尾芭蕉の像
- 人々の心と体を癒す、羽黒山の深い緑
- 羽黒山への交通機関と概要
まずは東京から上越新幹線で新潟へ
まだ残暑厳しい2018(平成30)年9月11日。東京駅から上越新幹線に乗車して約2時間余り、私はJR新潟駅に降り立ちました。実は新潟駅に来たのも初めての事です。
車窓からは青い日本海が…
新潟駅からはJR羽越本線・特急電車に乗りかえ、山形県を目指します。越後平野をどんどん行けば、やがて左側には青く果てしない日本海が…。遠くには粟島(あわしま)も見えました。
鶴岡駅からはバスに乗り、羽黒山へ
新潟駅から約2時間でJR鶴岡駅に到着、私は初めて山形県にやってきました!!
ここ鶴岡市は山形県北西部の日本海沿岸に位置し、人口は約13万人。2005(平成17)年に近隣市町村と合併し、より大きく発展しつつある街です。
羽黒随神門…ここからは神様の領域へ
バス停から歩けばすぐ、大きな鳥居が迎えます。そして左に見える建物が羽黒随神門。
随神門(ずいしんもん)とは、神社に邪悪な者が入ってこないように「御門の神」をお祀りする門という意味。
いよいよここから、羽黒山へと入ります。
ここは、出羽三山というご神域への入口です。
羽黒山の深い森へ足を踏み入れる
随神門をくぐると、そこは鬱蒼(うっそう)とした深い森。それだけで心と体が清められます。まず継子坂(ままこざか)を下れば、幾体もの神社が建ち並ぶでしょう。
静かな滝音に心安らいで…
やがて右側には、静かに流れ落ちる須賀の滝(すがのたき)が現れます。江戸時代に、この羽黒山全体を管理・監督する役職を務めた天宥(てんゆう)というお坊さまが、約8km離れた沢から水を引いて造った滝。
太くて大きな羽黒山の「お爺さん」
須賀の滝からはスギの大木が目立つようになります。 中でも有名なのは国の天然記念物に指定されている「爺杉(じじすぎ)」。樹齢は1,000年以上、いちばん太い所では周囲約10mもある巨樹です。
…昔はすぐ近くに「婆杉(ばばすぎ)」があったのですが、明治時代に台風で失われてしまいました。
森の中に気高くそびえる羽黒山五重塔
まもなく左奥には、羽黒山を代表する名所・五重塔が見えてきます。ぜひ立ち寄ってみましょう。
関東地方にその名をとどろかせた武将・平将門(たいらのまさかど)が1,000年以上前に創建したと伝えられますが、現在の塔は14世紀~15世紀頃に再建されたものです。
実は150年ぶりに塔の内部が公開されていました。
(残念ながら撮影は禁止)
五重塔を出れば、羽黒山への急な石段がはじまります。
いよいよはじまりました、長い長い石段!!
五重塔から少し進むと、羽黒山名物の長い石段参道がはじまります。標高414mの頂上まで、標高差約310mの急坂。まずは「一の坂」から、心を落ち着けて登りましょう。
羽黒山は苦行を積む修験の地
伝説によれば羽黒山は約1,400年前、時の崇峻天皇(すしゅんてんのう)の子、蜂子皇子(はちこのおうじ)によって開かれたとされます。権力争いの中で父・崇峻天皇が亡くなり、皇子はこの山へ逃れてきました。
そして「三本足の鳥」に導かれつつ、険しい山々を苦しみながら登り、出羽三山神社を建てたのです。
このような経緯もあって羽黒山には、神様への信仰と、仏教への信仰を共に尊重する「神仏習合(しんぶつしゅうごう)」が、今も根付いているのです。
樹齢500年の杉並木と共に山奥へ…
9月になったとはいえまだ残暑厳しい山形県。しかし石段両側に並ぶ、実に600本近い特別天然記念物の杉並木が大きな木陰をつくり、暑さをしのぐことができました。
ここからが正念場!! 羽黒山で最も急な坂
「一の坂」を過ぎると、最も勾配のきつい「二の坂」です。昔、かの有名な武蔵坊弁慶(むさしぼうべんけい)が、あまりの急勾配に、神社に奉納するため運んでいた油をこぼしてしまったことから「油こぼし」と呼ばれるほど、本当に急な坂道ですよ!!
…でも坂道の上に、何か見えてきました。
絶景と味に疲れも吹き飛んだ!!
五重塔から約20分、石段の中間点「名物力餅 二の坂茶屋」に到着しました。
庄内平野と青い日本海の景色が素晴らしい!! 右の方には日本海に浮かぶ飛島(とびしま)も見えます。ここは霧に覆われることが多く、「こんな景色が見られるのは運がいい」そうです。
人々をもてなす茶店の努力を感じて
二の坂茶屋は江戸時代創業という老舗。羽黒山に参拝する人々は、杵つきの餅を食べて「力」をつけたのでしょう。
ここは車やバイクが入れない場所。春から秋の営業期間中、食材や品物はすべてお店のみなさんが、この石段を歩いて運び上げるのです。…本当に頭が下がりますね。
世界最高級ガイドブックも絶賛の羽黒山
冒頭部分で「羽黒山は世界に高く評価された名所」とご紹介しました。それはこの石段と情景が、フランスのミシュラン社が出版する「ミシュラン・グリーンガイド・ジャポン」で、3つ星を受けているためなのです。
あの有名人も訪れた羽黒山
日本の歴史で最も有名な旅人といえば、江戸時代の俳人・松尾芭蕉(まつおばしょう)ですね。
このあたりは南谷(みなみだに)と呼ばれ、江戸時代には紫苑寺(しおんじ)というお寺がありました。そのお寺を建てた人こそ、先述の「須賀の滝」を造った天宥というお坊さまです。…実はこの紫苑寺に、松尾芭蕉が宿泊・滞在したことがあるのです。
さあ最後の急坂、がんばろう!!
いよいよ最後の難所、「三の坂」にさしかかりました。
ほら、頂上まであと少し!!


神々しさあふれる羽黒山頂上へ
頂上直前には、羽黒山参籠所・斎館(さいかん)があります。参籠所(さんろうじょ)とは神仏にひたすら祈りを捧げるため、一定期間生活する施設。松尾芭蕉も味わったという、格調高い精進料理が有名です。
2,446段を登りました!!
羽黒山の霊気に自分を見つめ直す
ここが羽黒山頂上(標高414m)。「山」という呼称は付いていますが、正確には「丘」とされています。
広い山上には、歴史を感じる数多くの建物が並んでおり、その中心こそ羽黒山三神合祭殿 (さんじんごうさいでん) です。茅葺(かやぶき)屋根に、いっそう神々しさを感じるでしょう。
…昔から「羽黒山は現代、月山は過去、湯殿山は未来」とされてきました。
人々は、羽黒山で今の自分を見つめ、月山で過去の自分を思い返し、
湯殿山で新しく生まれ変わる…と言われます。
羽黒山を開いた皇子も安らかに…
羽黒山三神合祭殿…近年は有名パワースポットとなりました。
山上にひっそりと立つ松尾芭蕉の像
芭蕉が羽黒山を訪れたのは1689(元禄2)年6月。その後、月山~湯殿山神社へと長い道のりを歩いたのです。

しかし私の旅はまだまだ続き、実はこの後3泊4日をかけて、松尾芭蕉が歩いたと思われる羽黒山~月山~湯殿山神社~志津温泉までの約50kmを歩きぬいたのです!!
ただしこの道は、非常に長く厳しく険しいため、一般の方にはおすすめできません。
Photo by Manabu Kato in September 13, 2018
Photo by Manabu Kato in September 14, 2018
(11月上旬頃から4月下旬頃までは積雪のため、山そのものが閉鎖されます)
人々の心と体を癒す、羽黒山の深い緑
羽黒山には「神仏習合」が今も深く根付いています。それが現実になるまでには、多くの人々の対立と衝突の歴史があったにちがいありません。しかし思想や目標のちがいはあっても、羽黒山を敬う気持ちは同じ。
だからこそ人々は、この羽黒山で「自分自身を見つめ直し、生まれ変わる」のでしょう。このような神様・仏様を尊ぶ山に、世界のみなさんが「ぜひ行ってみたい」と考えるのも、不思議ではないですね。
涼しさや ほの三日月の 羽黒山
「涼しい風の吹く初夏の羽黒山、空には三日月がほんのりと見える。何という心地よさだろうか…」
2,446段の石段を登れば、そこにはきっと新しい世界が広がっているでしょう。
日常生活に疲れたならば、羽黒山へいらっしゃい。
羽黒山への交通機関と概要
【羽黒山グーグルマップ】
【羽黒山への交通アクセス】
【電車・バスでのアクセス】
●東京駅から上越新幹線「Maxとき」に乗車し、約2時間弱で新潟駅。
新潟駅からはJR白新線(羽越本線)の特急「いなほ・酒田行」に乗車し、約1時間50分で鶴岡駅に到着します。
●鶴岡駅前から、庄内交通バスの羽黒・月山線「羽黒山頂・月山八合目方面行」に乗車。約40分(840円)で、羽黒随神門バス停に到着。また羽黒山頂へは約60分(1,210円)で到着します。
詳細は「庄内交通」の下記サイトをご参照ください。(バス料金は2020年1月8日現在)
www.shonaikotsu.jp/local_bus/index.html
【羽黒随神門バス停から、徒歩でのアクセス】
以下は私の歩いたコースタイムです。(休憩時間等は除く)
●羽黒随神門バス停 (2分) 羽黒随神門 (5分) 須賀の滝 (5分) 羽黒山五重塔 (2分) 一の坂石碑 (20分) 二の坂茶屋 (10分) 三の坂石碑 (20分) 羽黒山頂大鳥居 (2分) 羽黒山三神合祭殿
羽黒山の石段は登山道です。体力と体調に合わせ、決して無理をしないように。
【羽黒山・各関連リンク】
●出羽三山神社公式ホームページ 羽黒山
http://www.dewasanzan.jp/publics/index/71/
●つるおか観光ナビ
https://www.tsuruokakanko.com/spot/548
●休暇村 庄内羽黒 (私の宿泊した場所です)
https://www.qkamura.or.jp/haguro/
最後に…羽黒山へ登った認定証です!!

旅行大好きなアラフィフ男子。生活拠点は国際観光地として有名な神奈川県箱根町、訪れる人々から道や名所について尋ねられる事も珍しくありません。観光名所はもちろん、その地の自然や地理、歴史などの話も含めて、皆様に楽しく伝えられればと思います。