さあ、八甲田ロープウェーに乗り自然豊かな山へ

八甲田ロープウェー、紅葉の終わった晩秋の山を上ります。
Photo by Manabu Kato in October 21, 2015

旅好き人間の私・加藤学は、実はまだ北海道に行ったことがありません。以前までは秋田県北秋田市が足を運んだ「日本最北端記録」でした。

しかしここ3~4年間の2回、青森県青森市へ到達したことで、その「日本最北端記録」は更新されました。

・・・北国青森へ2回も足を運んだ理由は、「八甲田ロープウェー」に乗って青森の名峰「八甲田山(はっこうださん)」に登るためです。

旅好きであると同時に登山好きの私は、これまで地元の箱根の山々をはじめ、日本一の富士山や北アルプス、中央アルプス、南アルプス、丹沢山などの険しい山に幾度となく登って来ました。

八甲田ロープウェー、紅葉の終わった晩秋の山を上ります。
Photo by Manabu Kato in October 21, 2015

そんな中で「一度、遠い北の山へ登ってみたい」と思い立ち、いちばん最初に思い浮かんだのが「八甲田山」なのです。

さらに、私が小学生の時に観た高倉健さん主演の超名作映画の印象も強く、「ぜひあの山へ行ってみたい」という気持ちはますます強くなり、秋も深まりつつある2015(平成27)年10月と、真夏の暑さ厳しい2016(平成28)年7月、本州最北端の山へ2回にわたって足を踏み入れました。

ここから紹介する八甲田山の山行記録はその2回分の模様です。 (写真の日時が前後することもありますがご了承ください)

さあ、いっしょに八甲田山へ登りましょう!!

Contents

初めて青森にやってきました!!

神奈川県箱根町からはるばる青森まで行くのですから、早朝には出発します。

小田原駅から始発の東海道新幹線に飛び乗って東京駅へ、そして7時30分過ぎ発の東北新幹線・新青森行き「はやぶさ」で東日本を北上すれば、11時には「新青森駅」に到着します。

まずはここで昼食をとって一休みしましょう。

新青森駅内にある「あずまし広場」

Photo by Manabu Kato in July 11, 2016

青森といえば毎年8月に開催される「ねぶた祭り」。迫力満点の「ねぶた」が迎えます。

東北新幹線・新青森駅
Photo by Manabu Kato in July 11, 2016

新青森駅前からは「JRバス東北・十和田湖行き」に乗って八甲田山へ向かいます。

八甲田山へ向かうバスは「みずうみ号」

私が初めて八甲田山を訪れたのは2015(平成27)年10月21日。さわやかな秋の青空が広がり、車窓からの八甲田山の眺めは素晴らしいの一言でした。

JRバス東北「みずうみ号」は酸ヶ湯温泉(すかゆおんせん)を経由し、八甲田山の南にある十和田湖(とわだこ)へ向かって走ります。

Photo by Manabu Kato in July 11, 2016
Photo by Manabu Kato in October 21, 2015

残念ながら紅葉は1週間前に終わりましたが、落葉の木々が晩秋の八甲田山を感じさせました。

三杯飲めば死ぬまで生きる?…伝説の麦茶

新青森駅を出発してから約45分、バスは「萱野茶屋(かやのちゃや)」に止まります。

雄大な八甲田山の景色が広がる高原に3軒建ち並ぶ茶店、ここで10分ほど休憩。

Photo by Manabu Kato in October 21, 2015

名物そばや五平餅、おでんも味わえますよ!!

Photo by Manabu Kato in October 21, 2015

お店の前には「かやの三杯茶」と呼ばれる麦茶の無料サービスがあります。

この麦茶は「一杯飲めば三年、二杯飲めば六年、三杯飲めば死ぬまで長生きできる」と伝えられます。ぜひ頂きましょう。

遠い北の山、八甲田山に到着

萱野茶屋からバスはさらに山道を上ります。そして新青森駅から約1時間05分で「ロープウェー駅前」バス停。歩いてすぐに「八甲田ロープウェー山麓駅」(標高約670m)に到着しました。

駅の中には「レストハウス八甲田」があり、食事もできます。

Photo by Manabu Kato in October 21, 2015
Photo by Manabu Kato in July 11, 2016

本日の宿のチェックインまで時間があるので、早速「八甲田ロープウェー」に乗ってみます。

山の上ではどんな景色が待っているのでしょうか。

広大な山々と森林を進むロープウェー

「山麓駅」からロープウェーは、八甲田の山々から広がる深い森林を眼下に見ながら、約10分で「山頂公園駅」へ到着します。

あっという間に八甲田の山を上ってきました。

Photo by Manabu Kato in October 21, 2015
Photo by Manabu Kato in October 21, 2015

山頂公園駅からは、最高峰の大岳(おおだけ・標高1585m)をはじめとする八甲田の山々の景色が迫力満点。明日はあの頂上に登り、酸ヶ湯温泉をめざします。

明日も晴天と思いました、ここまでは…

西には青森県でいちばん高い岩木山(いわきさん・標高1625m)が、かすかに見えます。

Photo by Manabu Kato in October 21, 2015
Photo by Manabu Kato in October 21, 2015

八甲田山の上空も青空、この時点では明日の晴天も間違いなし…と思っていました。

八甲田山の森に抱かれた木の香り豊かな宿

再びロープウェーで山麓駅に戻り、歩いてすぐの場所にある「八甲田山荘」へ。ここが今夜の宿です。

八甲田山の自然と歴史、アウトドア活動に詳しい山岳ガイドの方が常駐する、ログハウス調の温かみのある宿。

Photo by Manabu Kato in October 21, 2015
Photo by Manabu Kato in July 11, 2016

各部屋には「やませみ」「きびたき」「ほしがらす」など、野鳥の名前が付けられています。今回とこの次(2016年7月11日)の2回とも宿泊しました。

私のお気に入りの宿です。

山荘の周りもすっかり晩秋の気配

木々が葉を落とした八甲田山でしたが、山荘周辺の森はまだ黄葉が楽しめました。

Photo by Manabu Kato in October 21, 2015
Photo by Manabu Kato in October 21, 2015

明日もきっと晴天になるはず…本当にそう思っていました。しかし…

ところが翌朝…目の前に広がる雪景色!!

10月にも関わらず強く冷え込んだ22日の朝、八甲田山荘の周辺は真っ白い霧に覆われているだけでなく、よく見ると何と一面の銀世界!!

山の上の景色はもちろん見えません。それでも大岳へ向けて出発します。

ロープウェー山麓駅の周りも一夜にして銀世界。まずは山頂公園駅へ向かいましょう。

Photo by Manabu Kato in October 22, 2015
Photo by Manabu Kato in October 22, 2015

標高約1320mの山頂公園駅はさらに寒い銀世界。昨日の秋晴れの景色とは一変です。

あれほどきれいに見えていた大岳も、濃い霧におおわれてその姿は見えません。

木も葉も実も空気も人も凍てつく八甲田山

霧や雲が樹木に凍り付く「霧氷(むひょう)」…つまり今ここは氷点下!!

Photo by Manabu Kato in October 22, 2015
Photo by Manabu Kato in October 22, 2015

真っ赤な実も寒そうです…

準備を整えて9時45分に山頂公園駅を出発し、大岳をめざしますが…。

私の頭をよぎる雪山遭難、そして…

歩き始めて5分もたたないうちに、想像以上の積雪に苦しめられます。

この先、大岳へはさらに厳しい状況になるでしょう。紅葉が終わった八甲田山は、もういつ雪が降っても不思議ではないのです。

アオモリトドマツの木に積もる雪。
Photo by Manabu Kato in October 22, 2015
Photo by Manabu Kato in October 22, 2015

山頂公園駅を出発して30分余り。これ以上の登山は危険と判断し、残念ながら大岳登頂をあきらめました。

ここからは山の西側につづくゆるやかな登山道を行き、中腹に広がる「毛無岱(けなしたい)」という湿原を経由して、酸ヶ湯温泉をめざすことにします。残念・・・!!

初雪の大岳をバックに「毛無岱」へ…

大岳登頂を断念後、約1時間で到着した場所。ここから見る大岳頂上は氷雪の世界です。

この場所からも大岳へ登れますが・・・やはり危険です、あきらめましょう。

Photo by Manabu Kato in October 22, 2015
Photo by Manabu Kato in October 22, 2015

「上毛無岱(かみけなしたい)」と「下毛無岱(しもけなしたい)」に分かれる広大な湿原には、春から夏にかけてたくさんの花が咲き乱れます。

でもこの日は、荒漠(こうばく)とした晩秋の景色がどこまでも広がっていました。

八甲田山の花はのちほどご紹介しましょう。

ブナの大木を見ながら酸ヶ湯温泉へ…

正午を過ぎた頃から次第に天気も回復、酸ヶ湯温泉への途中にはブナの原生林があります。

そして、13時30分過ぎには酸ヶ湯温泉に到着しました。

Photo by Manabu Kato in October 22, 2015

翌日、酸ヶ湯温泉から望む大岳は快晴

Photo by Manabu Kato in October 23, 2015

なぜ昨日晴れなかったんだぁ~!? この次は必ず登頂するぞ!!

それから9か月後…再び八甲田山へ

季節は移り変わって2016(平成28)年7月11日。

北国青森でも猛暑続きの夏、前回と同じく東北新幹線「はやぶさ」ではるばる新青森駅へ、JRバス東北「十和田湖行き」に乗って「八甲田ロープウェー山麓駅」前へ…。

私は再び八甲田山にやってきました!!

Photo by Manabu Kato in July 11, 2016
Photo by Manabu Kato in July 11, 2016

今度こそ大岳に登頂するため、やはり前回と同じ「八甲田山荘」に宿泊します。
(八甲田山荘スタッフのみなさま、秋と夏の2回にわたり、ありがとうございました)

晩秋の日からすっかり別世界の八甲田山

翌7月12日。天気は申し分なし、ただ暑くなりそうです。

八甲田山荘を出発して始発のロープウェーに乗車。広がる森林は一面の緑におおわれ、色あせたグレーの晩秋とは別世界のようでした。

Photo by Manabu Kato in July 12, 2016
Photo by Manabu Kato in July 12, 2016

岩木山は半分雲の中でしたが、陸奥湾や青森市街の眺めはバッチリです。

今度こそあの頂上へ、大岳へ再挑戦!!

約10分で山頂公園駅。体操をして準備をしっかり整え、奇しくも前回と同じ「9時45分」、大岳へ向けて出発します。

Photo by Manabu Kato in July 12, 2016
Photo by Manabu Kato in July 12, 2016

これからめざす山々、左から赤倉岳(あかくらだけ)井戸岳(いどだけ)、そして大岳

自然に親しむ人々を運びつづけて半世紀

「八甲田ロープウェー」は1968(昭和43)年10月に開業しました。

標高約670mの「山麓駅」から、標高約1320mの「山頂公園駅」までの、全長約2460mをつなぐロープウェーです。

これは紅葉最盛期の八甲田ロープウェーです。

Photo by jun sawase – Autumn in Hakkoda,2012

夏から秋は観光や登山、冬から春はスキーやスノーボード…「十和田八幡平国立公園」に指定される八甲田山の、大らかで美しい自然を楽しむ多くの人々で賑わいます。

2001(平成13)年8月には開業以来の利用者数が1000万人に到達、2003(平成15)年にはスイス製のゴンドラが登場、2004(平成16)年には山麓・山頂それぞれの駅に11人乗りバリアフリーエレベーターが完成しました。

紅葉シーズンの10月は、訪れる人々が実に10万人にのぼります。この写真を見れば、それも「なるほど」と思えますね。

八甲田山の自然を手軽に楽しめる散歩道

山頂公園駅を起終点に、八甲田山の自然を楽しみながら、短時間でのんびりと歩ける「八甲田ゴードライン」と呼ばれる散策歩道があります。

登山をしなくても様々な高山植物や湿原植物の花を見ることができるため、自然観察会などの行事がよく開催されています。

Photo by Manabu Kato in July 12, 2016
この写真は前年秋の雪景色。
Photo by Manabu Kato in October 22, 2015

数字の「8」の字の形、または「ひょうたん…英語でGourd」の形に道がつづいていることから、この名が付けられました。30分コースと1時間コースの2つがあります。

八つの甲が連なり田の広がる山

ここで「八甲田山(はっこうださん)」という山についてお話ししましょう。

「八甲田山」は青森市の南に連なる大小20近くに及ぶ火山の総称で、東北地方を南北に縦断する「奥羽山脈(おううさんみゃく)」の北端に位置していますが、実はこの中に「八甲田山」という名前の山はありません。最高峰は大岳(おおだけ・標高1585m)で、「日本百名山」の一つです。

新青森駅前から眺める八甲田山、右の雲がかかっている三角形の山が大岳。

Photo by Manabu Kato in July 11, 2016

「八甲田山」の名の由来は、青森市から見て『つの(たくさんの)、(かぶと)のような峰々の上に、多くの(湿原)がある』と伝えられており、実際に多くの湿原が広がっています。

八甲田山は「北八甲田連峰」「南八甲田連峰」に大別され、今回ご紹介する八甲田ロープウェーや赤倉岳、井戸岳、大岳は、北八甲田連峰に入ります。

標高が1600mに満たない山でありながら、西の日本海と、東の太平洋の風潮流がまともにぶつかり合う場所にあるため、気象条件の大変厳しい山としても知られているのです。

登頂断念の日を超えて未知の世界へ

山頂公園駅を出発して約30分、前回登頂を断念した分岐点に来ました。

ここからはいよいよ急斜面、あえぎながら登ること約1時間20分で尾根(おね)に出ます。

Photo by Manabu Kato in July 12, 2016
Photo by Manabu Kato in July 12, 2016

左側が切れ落ちた尾根道を約15分登ると、赤倉岳(標高1548m)に到着します。

大昔の噴火口、そして夏も雪が残る北の山

赤倉岳からさらに15分ほどで井戸岳(標高1550m)。目指す大岳が再び見えてきました。

Photo by Manabu Kato in July 12, 2016
Photo by Manabu Kato in July 12, 2016

井戸岳付近には、約65万年前に大規模な爆発をおこしたとされる大きな噴火口があります。

直径約200m、深さは約60m。夏でも多くの雪が残っており、シャツでは寒いくらいでした。

めざす頂上はさらに近く大きく

ここまで来ると大岳が目の前に大きく迫ってきました。やがて急な斜面を下り、「大岳鞍部避難小屋(おおだけあんぶひなんごや)」に到着します。

Photo by Manabu Kato in July 12, 2016
Photo by Manabu Kato in July 12, 2016

大岳鞍部避難小屋からいよいよ大岳へ最後の急斜面、がんばって登りましょう!!

雪の中の断念から今…新たな自分に到達

そして登ること約50分、山頂公園駅を出発してから約3時間45分、ついに八甲田最高峰・大岳頂上へ登り着きました。

登頂を断念したあの雪の日から264日目、やったぁ~!!

Photo by Manabu Kato in July 12, 2016

当時の私はご覧のとおり、とても太ってメタボでした。ここまで登るのは本当に苦しかったです。

Photo by Manabu Kato in July 12, 2016

今日ここまで越えてきた赤倉岳や井戸岳の山々。

大岳頂上から広がる360度のパノラマ

9時45分に出発してきた八甲田ロープウェー山頂公園駅も遠くに見えます。

Photo by Manabu Kato in July 12, 2016
Photo by Manabu Kato in July 12, 2016

東側には美しいピラミッド型の高田大岳(たかだおおだけ・標高1552m)、その左に雛岳(ひなだけ・標高1240m)、写っていませんが右には小岳(こだけ・標高1478m)があります。

大岳頂上で思う存分過ごした後は、酸ヶ湯温泉に向かって下ります。

人々を癒やしてくれる花々の湿原

急な斜面を下って約45分、たくさんの花が咲き乱れる中、「仙人岱(せんにんたい)」という湿原に到着します。

あちこちに「池塘(ちとう…高山の湿原にある小さな池や沼)」が点在するここは、たくさんの貴重な動植物がすむ湿原。

この八甲田山には「岱(たい)」「萢(やち)」という、湿地帯を意味する地名が数多くあります。

Photo by Manabu Kato in July 12, 2016

風が心地よく20分も休憩してしまいました。

Photo by Manabu Kato in July 12, 2016

仙人岱から見た大岳、1時間ほど前まではあの頂上にいました。

厳しい気象の中、花々はたくましく育つ

八甲田山には春から夏にかけて多くの花が咲き乱れます。

決して派手ではありませんが、美しく愛らしく静かに八甲田山を彩る花々をご紹介しましょう。

ゴゼンタチバナ

涼しい森の日陰に咲きます。花言葉は「古風」

Photo by Manabu Kato in July 12, 2016

ヨツバシオガマ

高い山の湿地帯に見られます。花言葉は「誘惑」

Photo by Manabu Kato in July 12, 2016

鶴の舞う姿の花、波打つような花…

白く細かくつつましやかな花、少しウエーブのかかったおしゃれな花・・・

それぞれに葉を広げ茎をのばして、確かな存在感で見る人の心を打ちます。一挙にご紹介しましょう。

マイヅルソウ

やや高い山に群落となって咲きます。花言葉は「清純な少女の面影」

Photo by Manabu Kato in July 12, 2016

イワイチョウ

独特の鋸歯状の花で湿原に多く見られます。花言葉は「純血」

Photo by Manabu Kato in July 12, 2016

イワカガミ

各地の低山~高山の岩場に咲きます。花言葉は「忠実」

Photo by Manabu Kato in July 12, 2016

イワブクロ

火山系の山の岩場に咲きます。花言葉は「失った愛情」

Photo by Manabu Kato in July 12, 2016

ウサギギク

葉の形が「ウサギの耳」を想わせます。 花言葉は「愛嬌」。

Photo by Manabu Kato in July 12, 2016

ミツバオウレン

北日本の雪の多い山に咲きます。花言葉は「栄誉」

Photo by Manabu Kato in July 12, 2016

チングルマ

高い山の雪渓に群落となって咲きます。花言葉は「可憐」

Photo by Manabu Kato in July 12, 2016

アカモノ

四国以北の山に咲くツツジの仲間です。花言葉は「美しい思い出」

Photo by Manabu Kato in July 12, 2016

八甲田山の花がいつまでも咲くために

人々の心を打つ八甲田山の花々がいつまでも咲くことができるように、地元のみなさんが下草刈りなどの手入れをしています。

…そして花は決して「採(と)る」ことなく「撮(と)って」おきましょう。

ハクサンチドリ

北日本の山に咲き「千鳥」の飛ぶ姿を想わせます。花言葉は「美点の持ち主」

Photo by Manabu Kato in July 12, 2016

ヒナザクラ

雪の多い山に咲く、八甲田山が北限となる花です。花言葉は「乙女の息吹」

Photo by Manabu Kato in July 12, 2016

風さわやかな湿原から、荒々しい地獄の谷へ

仙人岱を出発して10分ほど行くと、噴煙と硫黄の匂いが立ち込める荒々しい沢に出ました。

「地獄湯の沢」です。恐ろしい名前ですが、これから向かう酸ヶ湯温泉は、今も火山活動を続ける八甲田山の恵みを受けているのです。

Photo by Manabu Kato in July 12, 2016
Photo by Manabu Kato in July 12, 2016

酸ヶ湯温泉まであと少し、がんばれ!!

酸ヶ湯温泉が見えてきました。もう足は疲れていますが、がんばって下りましょう!!

Photo by Manabu Kato in July 12, 2016
Photo by Manabu Kato in July 12, 2016

南八甲田連峰の最高峰・櫛ヶ峰(くしがみね・標高1517m)が見えます。

そして17時00分。大岳から約2時間45分、山頂公園駅から約7時間15分をかけて、酸ヶ湯温泉に到着しました!!

今夜は由緒ある温泉のお湯をじっくり味わいましょう。

山奥の豪雪地帯に栄える歴史深い温泉

「酸ヶ湯温泉(すかゆおんせん)」は古く江戸時代に開かれた歴史深い温泉で、八甲田山の山奥にも関わらず多くの人々で賑わいます。

「ヒバ」の木で造られた広大な「千人風呂」など、日本を代表する有名な温泉として知られています。

歴史ある建物の背後には、大岳が高くそびえます。

Photo by Manabu Kato in October 23, 2015
Photo by Hisashi Yamazaki – 酸ヶ湯温泉#1

またここは世界有数の豪雪地帯としても知られ、2013(平成25)年2月26日には、実に「5メートル66センチ」もの積雪を記録しました。

5メートル以上の雪なんて想像できますか?

極寒の中、亡くなっていった日本兵に合掌

酸ヶ湯温泉から約12.4km、車で約20分の場所に建つ「銅像茶屋(どうぞうちゃや)」。

ここから歩いて3分ほどの小高い丘に、1体の銅像が建っています。

・・・1902(明治35)年1月、真冬の八甲田山中で訓練をしていた「青森歩兵第五連隊」が、大寒波と猛吹雪に見舞われ遭難し、参加した210名のうち199名が凍死するという、世界でも例を見ない事態となった「八甲田山雪中行軍遭難(はっこうださんせっちゅうこうぐんそうなん)」。

Photo by Manabu Kato in July 13, 2016

この銅像は、数少ない生存者となった後藤房之助(ごとうふさのすけ)隊員の像です。

Photo by Manabu Kato in July 13, 2016

この遭難は後に作家・新田次郎(にったじろう)氏によって「八甲田山死の彷徨(ほうこう)」という小説となり、これをもとにして作られた映画が、1977(昭和52)年に上映された『八甲田山』。

…この映画で、八甲田山という山は多くの人々に知られるようになったのです。

冬の八甲田山は、寒く恐ろしい

秋が過ぎ12月になれば、八甲田山は深い雪に閉ざされます。

・・・この写真は、大量の雪が猛烈な寒気と季節風によってアオモリトドマツの木に凍り付いた「樹氷(じゅひょう)」で、「モンスター」とも呼ばれています。

Photo by HONMA WATARU

映画「八甲田山」では、この光景を「白い地獄」・・・と表現しています。

Photo by HONMA WATARU

冬の八甲田山は、明るく楽しい

人を寄せつけない厳しい冬の八甲田山。でも天気が回復すれば太陽と青空の下、思わず息をのむ絶景が広がります。

経験豊富なガイドのみなさんといっしょに、スキーツアーに出かけましょう。

Photo by HONMA WATARU

防寒対策と装備、連絡手段を万全にして、いざ冬の八甲田山へ!!

Photo by HONMA WATARU

すべては八甲田ロープウェーから始まる

今回私は秋と夏の2回にわたって八甲田山に足を運びましたが、1回目は自然に対する甘さを痛感させられ、準備を見直した2回目に念願の大岳に登ることができました。

でも、春の残雪の中でのスキーも、夏の登山や湿原の花々も、秋の紅葉と初雪も、冬の樹氷をめぐるスキーツアーも、すべてはこの八甲田ロープウェーがスタートです。

八甲田山の四季の自然の中でこれまで50年もの間、ほとんど休むことなく人々を運び、美しい八甲田山の景色をプレゼントしてきた八甲田ロープウェースタッフのみなさんには、本当に感謝の言葉しかありません

そしてこれからも八甲田ロープウェーは人々を自然豊かな山へ招待します

「みずうみ号」から眺める秋の八甲田山、右上に山頂公園駅が見えます。

Photo by Manabu Kato in October 21, 2015

厳しくも大らかな山、八甲田山。その八甲田山に様々な人々が、それぞれの想いを言葉に残しています。

特に印象に残った二つの言葉を、最後にご紹介しましょう。

『日本海と太平洋の風が直接ぶつかり、冬の山岳としてはこれ以上はない最悪の地帯です。おそらく今後、三十年、五十年、いや百年たっても、冬の八甲田は頑(がん)として人を阻(はば)み、通ることを許さないのではないかと思います』

(映画「八甲田山」より、高倉健さん演ずる主人公の言葉)

『西には津軽の名山岩木山がそびえ、その右手の低くなった所は日本海である。居ながらにして日本の幅を望み得ると同時に、見よ、北方には海を距(へだ)てて北海道の山が連なっている』

(深田久弥著「日本百名山」より、11.八甲田山 一五八五米)

インフォメーション

今回、私が歩いたコースを紹介します(見学時間、休憩時間等は除く)

2015年10月21日~22日

新青森駅(JRバス東北・45分)萱野茶屋(JRバス東北・10分)ロープウェー駅バス停(1分)山麓駅(八甲田ロープウェー・10分)山頂公園駅(30分)分岐点(60分)大岳分岐点(20分)上毛無岱(70分)酸ヶ湯温泉

2016年7月11日~14日

新青森駅(JRバス東北・45分)萱野茶屋(JRバス東北・10分)ロープウェー駅バス停(1分)山麓駅(八甲田ロープウェー・10分)山頂公園駅(30分)分岐点(95分)赤倉岳(15分)井戸岳(25分)大岳鞍部避難小屋(50分)大岳(45分)仙人岱(10分)地獄湯の沢(90分)酸ヶ湯温泉(タクシー・20分)銅像茶屋(3分)後藤房之助伍長銅像(3分)銅像茶屋(タクシー・35分)八甲田山雪中行軍遭難資料館(1分)幸畑墓苑バス停(青森市営バス・35分)JR青森駅(JR奥羽本線・5分)新青森駅

新幹線やバスの時刻は2015年~2016年当時のものですので、最新情報をご確認ください。

八甲田ロープウェー

【アクセス】JRバス東北「みずうみ号・十和田湖行き」でJR青森駅から約80分、新青森駅から約65分。
【営業時間】9時00分~16時20分(冬季は15時40分まで)、悪天候の場合は運休。(夏季には星空・夜景ロープウェーあり、また工事や設備点検による運休の場合あり)。
【料金】大人(中学生以上)…片道1180円・往復1850円、小人(小学生) …片道570円・往復870円、小学校入学前…無料、(他に各シーズン券などあり)
【所要時間】山麓駅から山頂公園駅まで約10分、運転間隔は15~20分、詳細は「八甲田ロープウェー株式会社ホームページ」をご覧ください。
【電話】017-738-0343

山麓レストラン・レストハウス八甲田

八甲田ロープウェー山麓駅内。和食・洋食等メニューが豊富に取り揃えてあります。計76席。
【営業時間】8時30分~15時00分(ロープウェー運休時は休業の場合あり)

山頂カフェ&レストラン・ひなざくら

八甲田ロープウェー山頂公園駅内。和洋食やコーヒー、スイーツが豊富に取り揃えてあります。計48席。
【営業時間】10時30分~14時30分(ロープウェー運休時は休業の場合あり)、
【電話】017-728-7135

八甲田山荘

【アクセス】八甲田ロープウェー山麓駅から歩いて約2分(向かって左側)。詳細は「八甲田山荘ホームページ」をご覧ください。
【電話】017-728-1512

八甲田ガイドクラブ

八甲田山荘ホームページからもアクセスできます。詳細は「八甲田ガイドクラブホームページ」をご覧ください。
【電話】017-728-1511

国民保養温泉地・酸ヶ湯温泉

【アクセス】JRバス東北「みずうみ号・十和田湖行き」でJR青森駅から約95分、新青森駅から約80分。詳細は「国民温泉保養地・酸ヶ湯ホームページ」をご覧ください。
【電話】017-738-6400

萱野茶屋

【アクセス】JRバス東北「みずうみ号・十和田湖行き」でJR青森駅から約60分、新青森駅から約45分。
【営業時間】10時00分~17時00分
【営業期間】4月中旬~11月中旬(冬季休業)
【電話】017-738-2428

大岳鞍部避難小屋

八甲田山登山者のために24時間利用可能です。
無人、収容人数20名、トイレあり、電気・水場なし。
【電話】017-734-9387

新青森駅・あおもり旬味館(しゅんみかん)

新青森駅のいわゆる「駅ナカ」で、青森名物の新鮮な食材を使ったグルメが味わえます。詳細は「あおもり旬味館ホームページ」をご覧ください。
【電話】017-752-6557

JRバス東北

詳細は「JRバス東北ホームページ」をご覧ください。

銅像茶屋・鹿鳴庵(ろくめいあん)

メニュー豊富な食堂やお土産店があります。昼食にはもってこいの茶屋。
【アクセス】酸ヶ湯温泉からマイカーまたはタクシーで約20分。(バスは通行していません)
【料金】鹿鳴庵(雪中行軍記念館)は入館料200円。
【営業時間】8時30分~17時00分。
【営業期間】4月中旬~11月中旬(冬季休業)。
【電話】017-728-1411)

青森市八甲田山雪中行軍遭難資料館

【アクセス】
・銅像茶屋からマイカーまたはタクシーで約35分。
・JR青森駅から青森市営バス「田茂木野・田茂木沢行き」で約35分、「幸畑墓苑」下車、徒歩1分。
・JR青森駅から青森市営バス「横内環状線行き」で約25分、「幸畑」下車、徒歩10分。
【観覧料】
(個人) 一般260円、高校生と大学生130円。
(団体・20名以上) 一般130円、高校生と大学生60円。
中学生以下と70歳以上の方は無料、高校生と大学生は学生証提示のこと、身障者割引あり。
【開館時間】
・4月1日~10月31日…9時00分~18時00分(入館は17時30分まで)。
・11月1日~3月31日…9時00分~16時30分(入館は16時00分まで)。
【休館日】12月31日~1月1日、2月21日~22日。詳細は「八甲田山雪中行軍遭難資料館ホームページ」をご覧ください。
【電話】017-728-7063