36年ぶりの京都清水寺…今も昔も観光名所の代表格

清水寺
Photo by Manabu Kato in December 5, 2017

季節を問わず国内外から多くの人々が、その古き良き伝統に憧れ訪れる国際観光地・京都。

一口で京都と言っても数限りない観光名所が思い浮かびますが、やはり大多数の人々は、歴史と由緒あるお寺や神社に集中する事でしょう。

最近、寺社仏閣を巡る人々が、特に若い方を中心に増えつつあります。

京都には実に約1700箇所のお寺、約800箇所の神社があるとされていますが、京都へ行けば誰もが必ずと言っていいほど足を運ぶ代表的なお寺といえば、やはり清水寺(きよみずでら)でしょう。

三重塔に、格子状に組まれた舞台、そしてお寺へ至る坂道やお店の数々など、京都を象徴する有名な情景が思い浮かんで来ますね。

その清水寺がふと懐かしくなり、神奈川県在住で旅好きの私・加藤学が、小学校の修学旅行以来36ぶりとなる京都へ、そして清水寺へ足を運んでまいりました。

平安神宮から清水寺まで歩く

小田原駅から新幹線ひかり号で約2時間。ほぼ定刻どおりに京都駅へ降り立ったのは、年末を迎えた2017年12月5日。

しかし年末にも関わらず各観光名所へ至る京都市バス乗り場は、国内外の観光客や修学旅行生で長蛇の列。

ようやく乗った超満員のバスで渋滞にストップしながら約30分余、最初の目的地・平安神宮に到着しました。

白砂の庭や色鮮やかな朱塗りの大極殿に、36年ぶりの京都の旅の無事を祈願した後、天気も良かったので、第2の目的地・清水寺まで歩いて向かう事に決め早速出発します。

平安神宮應天門の南にある岡崎交番前から「二条通」を西へ約7分進むと「東山二条交差点」。ここで「東大路通」に入り、左折して南下。途中これも有名な知恩院新門の前を通りながら、やがて有名繁華街「祇園 (ぎおん)」の文字が…。さらには日本の娯楽を代表する名所も…。

祇園 (ぎおん)
Photo by Manabu Kato in December 5, 2017
よしもと祇園花月
Photo by Manabu Kato in December 5, 2017

2011(平成23)年7月にオープンした「よしもと祇園花月」、有名芸能人の方もよく来場されるようです。京都へ、そして関西へ来た事を実感しました。ここまで来ると清水寺もぐんと近づきます。

平安神宮から約25分。東大路通から左側(音羽山側)へ入って間もなく、これも京都の名所の一つ・八坂神社の南楼門(みなみろうもん)前に出ます。

八坂神社の南楼門(みなみろうもん)
Photo by Manabu Kato in December 5, 2017

ここから南へ続く「下河原通」沿いに、京うどんの名店「美竹(よしたけ)」さんがありました。清水寺参拝の前に、こちらで昼食にしましょう。

美竹(よしたけ)
Photo by Manabu Kato in December 5, 2017

八坂神社南楼門から程近く、京都らしい落ち着いた風情の古民家がお店となった「美竹」さん。

ねぎうどんや肉うどん、梅うどん、にしんうどん(魚の「ニシン」がのっています)、力うどんなどの他、お稲荷さんやちりめんご飯など、メニューも豊富です。

庭園を眺めながら、名物うどんをどうぞ。

「美竹」さんから下河原通を南へ約10分。天高く聳える法観寺五重塔が見えてきました。ここからいよいよ清水寺への坂道(実際には坂道の途中)が始まります。

頑張って歩きましょう!!

いよいよ清水寺へ向かう坂道へ

法観寺(ほうかんじ)
Photo by Manabu Kato in December 5, 2017
法観寺(ほうかんじ)
Photo by Manabu Kato in December 5, 2017

法観寺(ほうかんじ)は説によれば592年に、かの有名な聖徳太子によって建立されたと伝えられています。

平安時代末期に火災で焼失しましたが、その後鎌倉幕府を開いた源頼朝の厚い援助で再建されたのです。

五重塔は一般的に「八坂の塔」と呼ばれ高さ49m。この清水界隈のランドマーク的存在となっています。ここから清水寺までは約10分。写真は「三年坂」。

三年坂
Photo by Manabu Kato in December 5, 2017
三年坂
Photo by Manabu Kato in December 5, 2017

清水寺へ続く坂道は他にも、東大路通から続く「清水坂」、「五条坂」などがあり、上部で合流します。

清水坂
Photo by Manabu Kato in December 5, 2017
五条坂
Photo by Manabu Kato in December 5, 2017

坂道を上ればそこには清水寺が…

仁王門
Photo by Manabu Kato in December 5, 2017

奈良時代に建てられたという歴史古い清水寺。鮮やかな朱塗りの「仁王門」が人々を迎えます。

紅葉の向こうの三重塔
Photo by Manabu Kato in December 5, 2017

紅葉の向こうには三重塔が…。

「夢のお告げ」と「金色の水流」

清水寺は、京都市東山区にある音羽山(おとわやま)の中腹に立つ寺院で、その歴史は古く1240年前の奈良時代、778(宝亀9)年に遡ります。

大和国(現在の奈良県)のお寺で修行をしていた延鎮(えんちん)というお坊様が、ある日「夢のお告げ」に従って北へ向かうと、到着したのは音羽山でした。

そこに「金色の水の流れ」を見つけた延鎮は、その水源を探すために流れを辿ってゆくと、修行をしている行叡(ぎょうえい)という年老いたお坊様に出会います。そしてこれから東国へ向けて旅立つという行叡は、延鎮に後を託して去ります。

延鎮は近くの木に「千手観音像」を刻み込みました。

これが清水寺の始まりと伝えられています。

延鎮が見つけた金色の清い水の流れは、後に「音羽の滝」と呼ばれるようになりました。

紅葉に彩られた清水寺の阿弥陀堂(左)と奥の院(右)
Photo by Manabu Kato in December 5, 2017 – 紅葉に彩られた清水寺の阿弥陀堂(左)と奥の院(右)

お坊様に説かれた最高権力者

その2年後の780(宝亀11)年、鹿を捕まえようと音羽山に入って来た、時の権力者・坂上田村麻呂(さかのうえのたむらまろ)は、偶然出会った延鎮に「生きとし生ける者を殺(あや)めてはなりませぬ」と諭されて心を改めました。

後日「千手観音菩薩」を御本尊として自ら寺院を建立し、清らかな音羽の滝の水に心打たれ「清水寺」と名付けたとされています。

後に平安時代の日本を治める「征夷大将軍」となった坂上田村麻呂にまつわる寺院や神社が、全国各地に存在しています。

「晴れの舞台」は「決意の舞台」

名所・清水寺の代名詞とされるほど有名なのは、「清水の舞台」として知られる本堂でしょう。

延鎮が、坂上田村麻呂が尊んだ「千手観音菩薩」が祀られるこの建物は、険しく切れ落ちた崖に日本古来の伝統工法によって建てられ、今もその頑丈さを保っています。

太陽が照り付けて明るい本堂の南側には、張り出すように広がる場所があります。400枚以上に及ぶ檜(ひのき)の板で形成された「清水の舞台」。

清水の舞台
Photo by Manabu Kato in December 5, 2017

清水寺は観音様を崇める多くの人々が訪れますが、この「舞台」は、大勢のお坊様が集まって仏事を行う法会(ほうえ)などの際に、観音様に奉納する芸能を行う場所なのです。

この「舞台」から眼下の地上までの高さは約13mあります。

私たちは、夢みていた晴れの場所に立つ事を「檜舞台を踏む」と言います。この清水の舞台が言葉の由来になったのかは分かりませんが、尊敬する観音様の前で芸能を行うのですから、まさに檜舞台と言えるでしょうね。

また、「清水の舞台から飛び降りる」という諺(ことわざ)があります。大きな物事を行うには、この舞台から飛び降りる覚悟で実行する決意を表した諺です。

「晴れの舞台」は「決意の舞台」でもあるのですね。

釘を1本も使わない高度な建築技術

「清水の舞台」からは京都の街並みや山並みなど、「山紫水明」と呼ばれる京都の美しく気品に満ちた風景が存分に楽しめます。

その「舞台」を、雨の日も風の日も雪の日も支え続けて来たのは「懸(かけづくり)」と呼ばれる傾斜が急な場所に建築する伝統工法です。

懸(かけづくり)
Photo by Manabu Kato in December 5, 2017

本堂の向かい側や下側から見ると分かりますが、樹齢400年以上の欅(けやき)の木材同士が格子状に互いを支え合い、釘(くぎ)を一本も使わずに組み合わさる事で、地震にも強い建物の構造を作り出しています。

内側から見ると…確かに釘を使っていません!!!

地獄組み
Photo by Manabu Kato in December 5, 2017

決して外れる事のない「地獄組み」と呼ばれ、釘がないので錆びる心配もないのです。

このような歴史的、伝統的な建築の重要性が高く評価され、1994(平成6)年には「世界文化遺産」に登録されました。

音羽の滝…お寺の由来はこの水に

清水寺は観音様を尊ぶ場所、京都を一望出来る場所であると同時に、パワースポットとしても親しまれています。

ここでは、清水寺境内にある2つのパワースポットをご紹介しましょう。

まずご紹介するのは「音羽の滝(おとわのたき)」です。

この清水寺を開いた人は延鎮という奈良時代のお坊様です。

「夢のお告げ」に従って辿り着いた音羽山で見つけた清らかな「金色の水の流れ」が、今もなお尽きる事なく流れているのです。

「清水の舞台」から望む音羽の滝
Photo by Manabu Kato in December 5, 2017 – 「清水の舞台」から望む音羽の滝

音羽の滝には3つの滝があり、いずれもご利益があると伝えられています。

向かって左から「学問成就の水」、「恋愛成就の水」、「延命長寿の水」となっています。

まずは滝の後ろにあるお地蔵さんに願い事をしてから、それぞれの願いに合った滝の水を頂きましょう。

しかし、全て叶えたいと思って全ての滝の水を飲むのはタブーとされています。観音様も「欲深い人」にはご利益を授けてくださいません。「一つの物事に懸ける人」に御利益を授けてくださるのでしょう。

また「二口目でご利益が二分の一、三口目でご利益が三分の一」とも言われており、飲むのに手間取っているとご利益が薄れてゆくのです。

必ず一口で飲みましょう。

首振り地蔵…その首はぐるっと回る

次にご紹介するのは「首振り地蔵」です。

おそらく、このお地蔵さんの存在を初めから知っていて訪れる人は少ないでしょう。

清水寺の「仁王門」前にあるにも関わらず、ほとんどの人は気付かずお寺の方へ行ってしまうのですから…。

このお地蔵さんは仁王門手前の「善光寺堂」にありますが、注意していないとうっかり通過してしまうでしょう。

その特徴は「首が360度回る」という、全国でも珍しいお地蔵さんです。

「首振り地蔵」には、次のような話が伝えられているのです。

江戸時代中頃から、すぐ近くの有名繁華街・祇園を盛り上げていた芸妓さん。その芸妓さんといっしょにお座敷に上がり、ユニークな芝居などでさらに宴席を盛り上げる「太鼓持ち」という男性がいたのですが、その中に「鳥羽八さん」という人がいました。

鳥羽八さんは誰かがお金に困っていれば、自らお金を工面して貸してあげるほど親切な男性でしたが、そのうち自身が借金に苦しみ、自ら命を絶ってしまったのです。その死を悲しんだ人々が、鳥羽八さんの供養のために財を投じて建てたお地蔵さんと伝えられています。

地蔵院善光寺堂
善光寺堂(出典元:「京都ホテルトラベルHP」内、「京都観光地への旅」の「地蔵院善光寺堂と首振り地蔵」より)
首振り地蔵
首振り地蔵(出典元:「京都ホテルトラベルHP」内、「京都観光地への旅」の「地蔵院善光寺堂と首振り地蔵」より)

高さは約50cm。赤い頭巾によだれかけ姿が愛らしいこのお地蔵さんは、借金で「首が回らなかった」鳥羽八さんを気の毒に思い、「首が回る」ようにしてあるのです。

その後長年の間、ご利益を求めて多くの人々がお地蔵さんの首を回し拝んだのですが、20年ほど前のある時、何と首が落ちてしまったのです。そのためお寺が一時はお堂の扉を閉鎖し、触れるのを禁止していましたが、人々の強い要望もあり「二代目」のお地蔵さんとして復活したのです。

近年は「恋愛成就」を目的に、心に想う人の住む方向へお地蔵さんの頭を向けて拝む人も多いようです。

いずれにしても、心を込めて大切にさわってあげましょう。

京都観光を着物レンタルで華やかに

私は個人的に36年ぶりの京都訪問ですが、本当に京都はお洒落で華やかになったなぁと思います。

それは京都の街を歩く男性も女性も、和風情緒いっぱいの着物姿で歩く人が多くなったからでしょう。

少なくとも36年前には見られなかった光景ですね。

近年、京都を訪れる特に若い人々や、海外から訪れる人々を、格式高く華やかに演出しているのが「着物レンタル」です。

清水寺界隈
Photo by Manabu Kato in December 5, 2017
清水寺界隈
Photo by Manabu Kato in December 5, 2017

いざ着物を購入するとなると、高額な上に着付けもしなければならないので、とても大変です。

そんな時、手近な専門店で着物をレンタルすれば、簡単に着物で観光を楽しめます。

  • 「着物で動くのは大変そう…」
  • 「返しに行くのが面倒…」

と考えてしまう方も安心。この清水寺界隈には徒歩で行ける距離内に着物レンタル専門店が複数軒あるんです!!

これならば着物姿で長い距離を移動する必要もなく、しかもお値段は3千円からととてもお得です!!

清水寺界隈
Photo by Manabu Kato in December 5, 2017

一昔前にタイムスリップしたような感覚の京都観光になることは間違いありません!!!

着物姿でこういうお店に入れたら、ステキですね!!!

旅のまとめは清水寺の教え

小学校6年生の時に修学旅行で初めて京都を訪れた私。実はその時も1番目の見学場所は平安神宮、2番目の見学場所は清水寺だったのです。

修学旅行時は決められたスケジュールの中での行動でしたが、今回は徒歩で自由に思う存分、平安神宮から続く界隈と清水寺を味わう事が出来ました。

京都と言えば清水寺、修学旅行と言えば清水寺とすぐに思い浮かぶほど清水寺はすっかり有名になりましたが、一番初めにも触れたように、今、お寺を訪れる人々が多くなっています。

殺伐とした事件や大きな事故、災害が続き、格差社会とまで呼ばれる現代。

人々は「心の安らぎ」「生きる道標」を求めてお寺に足を運ぶのでしょう。

観音様への信仰心、一つの物事に懸ける水、回らないはずの首を回してかける願、飛び降りる覚悟で臨む舞台、さらには権力者でさえも返す言葉を失った深い御教え…人生の様々な問題を解決へ導く道すじが、それぞれに名所として現れる場所…それが清水寺でした。

平成の大改修
Photo by Manabu Kato in December 5, 2017 – 修復工事中の清水寺本堂

現在、清水寺では「50年に1度」「平成の大改修」と呼ばれる大規模な修復工事が行われています。何百年もの間、激しい風雨や地震に耐え続けて来た建物にはあちこちに傷みが生じているため、総工費約40億円という大工事に至ったのです。

建物の解体に再築、屋根の葺き替えなど、工事完了予定は東京五輪の翌年、2021年3月との事です。

…今度、清水寺はどんな姿で私たちを迎えてくれるのでしょうか。

インフォメーション

清水寺へのアクセス

  • JR京都駅前バスターミナル「D1乗り場」から京都市バス「100系統」乗車。約15分(230円)、「五条坂」または「清水道」下車。清水寺仁王門まで徒歩約15分。(但し京都市内は交通渋滞が激しいため、倍の時間がかかる事は心しておきましょう)

ちなみに私の歩いたコースもご紹介します

  • JR京都駅前バスターミナル「D1乗り場」から京都市バス「100系統」乗車。約35分(230円)、「岡崎公園美術館・平安神宮前」下車。応天門まで徒歩約5分。
  • JR京都駅前バスターミナル「A1乗り場」から京都市バス「5系統」乗車。約40分(230円)、「岡崎公園美術館・平安神宮前」下車。応天門まで徒歩約10分。

 

【平安神宮から清水寺まで徒歩】(昼食時間は省く)

平安神宮應天門(2分)岡崎交番前(二条通・7分)東山二条交差点(東大路通・12分)よしもと祇園花月前(東大路通・5分)八坂神社西楼門前(音羽山側へ・5分)八坂神社南楼門前(下河原通・1分)京うどん「美竹」(下河原通・5分)法観寺五重塔前(三年坂・10分)清水寺仁王門

清水寺の拝観料

  • 大人…400円 小人…200円(小中学生)

清水寺ホームページ

https://www.kiyomizudera.or.jp/

京うどん美竹

  • 場所・・・八坂神社南楼門から下河原通を南へ徒歩1分
  • 電話・・・075-561-2954
  • 営業時間・・・11時30分~15時00分
  • 定休日・・・水曜日  (変更の場合もありますので事前にご確認ください)