これで煩悩が解決!高尾山薬王院中心のパワー充電コース

高尾山
Photo by Tsubaki in May 20, 2018

「高尾山」といえば、標高599mという手軽さ、都心から約1時間というアクセスの良さ、そしてビアガーデンなどの施設も充実していることから、家族のレジャー地だけでなく、最近では人気のデートスポットにもなっています。

しかし、神社仏閣が好きな筆者としては、デートやハイキングだけでなく、高尾山の中腹にあるお寺をぜひ楽しんでほしい!そして煩悩をふっとばしてパワーを充電してほしい!というわけで、今回は筆者が実際に廻ってきた薬王院中心の登山ルートを紹介します。

そもそも高尾山ってどんな山?

高尾山は東京都八王子市に位置する標高599mの山です。

戦国時代は北条氏に治められ、江戸時代には幕府直轄地になり、その間自然が保護されてきました。明治以降も御料林(明治憲法下での皇室所有の森林)、昭和には国有林に指定され保護され続けていたものの、第二次世界大戦時には造船のため、大戦終了後は家屋の再建のために多くの樹が切り出されてしまいます。

昭和42年には明治の森高尾国定指定公園となり、森林が再度保護されるようになりました。最近はレストランガイドで有名な「ミシュラン」が発行する旅行ガイド「ミシュラン・ボワイヤジェ・プラティック・ジャポン」で富士山と高尾山のみが山で三ツ星を取り、年間の登山者が最も多い人気の山となっています。

高尾山薬王院はどんなお寺?

高尾山薬王院
Photo by Tsubaki in May 20, 2018

高尾山薬王院はその高尾山の中腹に位置し、正式名称は「高尾山薬王院夕喜寺」ですが、通常「高尾山薬王院」と呼ばれています。この記事では更に「薬王院」と略します。

約1300年前に行基が開山し、その時の本尊が「薬師如来」だったため、”薬”王院と名付けられました。1375年には京都の醍醐山より俊源(しゅんげん)が入山し、現在のご本尊となる山岳信仰の「飯縄大権現」を祀るようになりました。

現在では、弘法大師空海を始祖とする真言宗智山派のお寺として、千葉県の成田山新勝寺、神奈川県の川崎大師平間寺と共に関東三大本山の一つとなっています。

この飯縄大権現の随身が天狗であることから、高尾山には天狗信仰が残っており、山のあちこちで天狗の像を見かけたり、多くのお土産に天狗が描かれたりしています。

このような霊験あらたかな山のためか、昔から修験道(山にこもって厳しい修行を積み、悟りを得ることを目的とする山岳信仰が取り入れられた日本独自の仏教)の修行場にもなっています。高尾山では修験道を実践する山伏だけでなく、一般人も滝修行に挑戦することができます(今回私はできませんでしたが…)

高尾山に登ろう!でもどんなルートがあるのかな?

多くの山には複数の登山ルートがありますが、高尾山にもいくつかコースがあります。

今回は私自身高尾山が初めてだったことと、薬王院が目的だったので、1号路を進んでいきました(下記のコースマップは高尾登山電鉄のホームページからお借りしました)

コースマップ

山のふもとと中腹はケーブルカーとリフトが運転されています。徒歩で行くと40分かかりますが、これらを使うと15分くらいで登ることができます。

今回私は行きを徒歩・帰りをリフトにしたのですが、急な傾斜の道がちょこちょこ出てきて、話に聞いていたよりもしっかり「登山してる!」という気分を味わえました。

余裕があれば行ってほしい秘密のスポット・金毘羅社

金毘羅社
Photo by Tsubaki in May 20, 2018

上のマップではわからないのですが、1号路を途中まで行くと、途中で分岐する場所があります。一方は1号路の主なルート、もう一つは金毘羅社・展望台を通り、再び1号路に合流するルートです。

私は体力的な余裕があったので、今回こちらを進んでみました。思っていたより早く到着し綺麗な景色が見られたので、分岐地点でまだ余裕があるという方は行ってみてください。

金毘羅社自体は社務所もなく、小さな神社なのですが、人があまりいないため「秘密のスポット」感が出ていて(笑)非常にお勧めです。

ケーブルカーの高尾山駅でちょっと休憩♪

天狗屋
Photo by Tsubaki in May 20, 2018

さて、金毘羅社を過ぎて1号路のメインルートに合流してしばらくすると、リフトの山上駅とケーブルカーの高尾山駅が見えてきます。

特にケーブルカーの高尾山駅にはなかなかモダンなおみやげスポットと展望台があるので、ぜひここで休憩をしておいてください。展望台はレストランも併設していて、夏季にはビアガーデンも開催されるのですが、月ごとにクラフトビール祭り、ハイネケンdayなどイベントが催されており、ビール好きはつい何回も足を運んでしまいそうです。

お土産スポットには高尾山のシンボルでもある天狗が描かれたグッズ、東京限定のお菓子や高尾山でしか買えない「黒豆まんじゅう」などを購入することができます。特におみやげスポットにある「天狗屋」では天狗の形をした「天狗焼」が売られているのですが、行列ができるほどの大人気。

せっかくなので今回私も並んで食べてみました。焼きたてをいただけるので外はさくっとしつつ、中は柔らかく餡子(しかも黒豆餡!)を味わえます。

腹ごしらえが終わったら目指せ薬王院!

休憩が終わったら薬王院(と頂上)を目指してさっそく進みましょう。このあたりから再び傾斜が急になってきます。

しばらく進むと、「さる園」を発見。約70頭のお猿さんがいるとのことだったのですが、薬王院に早く行きたかったので今回は断念…。中には野草園も併設されているとのことで、興味ある方はぜひ行ってみてください。ゴールデンウィークや紅葉シーズンにはイベントもやっているようです。

さる園を過ぎるとすぐに「たこ杉」が見えてきます。

たこ杉
Photo by Tsubaki in May 20, 2018

高さ37m、樹齢450年の足がぐにゃりとたこのように曲がっている杉の木です。

このたこ杉には次のような言い伝えがあります。

昔、薬王院への参道の工事をしていると、大きくて邪魔になる杉がありました。

色々考えた結果、切り倒すしかないという結論に至ったのですが、それを聞いた杉の木は一晩のうちにくるくると根を曲げて、参道のために道を開けたというのです。

この言い伝えから、この杉は開運の杉として祀られ、多くの人がご利益を求めて根を触るようになったのですが、樹齢450年にもなる木を守るため、現在では柵が作られて触れないようになっています。その代わりに、杉の隣には「ひっぱりだこ」という縁起のよさそうなたこの像がおかれています。

この日も、多くの人がご利益を求めて、たこの頭を触りまくっていました。

このたこ杉・ひっぱりだこを過ぎると、「浄心門」が見えてきます。

浄心門
Photo by Tsubaki in May 20, 2018

この浄心門には「霊氣満山」という額がかけられており、ここから薬王院の境内となっています。一歩入ると、参道の両隣には赤い灯篭が並んでおり、神秘的で厳かな雰囲気が出ています。

参道を進んでいくと、「南無飯縄大権現」という大きな碑が立っており、道が二手に分かれています。左の急な階段の道を「男坂」、右のゆるやかな道を「女坂」といいます。

この道は最後には合流しますので、今回行きは男坂・帰りは女坂を通りました。ちなみに男坂を上ると煩悩が消えるそうです。

苦抜けの門
Photo by Tsubaki in May 20, 2018

男坂の階段を上ってすぐの右手には「苦抜けの門」があります。

門には「苦抜け門 三密の道」と書かれており、「三密」は仏教における人間の日常生活を成立させ、かつ煩悩の元となる三つの働きである身(身体)、口(言葉)、意(心)のことです。

この三密の道を歩いていくと、仏舎利塔がある場所に出ます。

仏舎利塔
Photo by Tsubaki in May 20, 2018

仏舎利塔はお釈迦様の骨を納めている塔です。こちらの仏舎利塔は1930年にタイ王国から譲られた仏舎利を納めており、タイの仏塔様式に基づいて建てられたため、珍しいデザインをしています。

修行場
Photo by Tsubaki in May 20, 2018

仏舎利の塔の隣には、なんと修行場が…。当然ですが今回は入れませんでした。ちなみに修行場には飯縄大権現と2体の天狗の銅像が立っています。

これらを過ぎていくと、男坂と女坂の合流地点に出ます。合流地点にはお団子やジェラート、飲み物などを売っているお店がありますのですぐわかります。お茶がセルフサービスで頂けますので、ちょっと一息ついて先に進みましょう。

薬王院までもう少しです。

そして遂に薬王院に…!

高尾山薬王院
Photo by Tsubaki in May 20, 2018

薬王院の門が見えました。

「高尾山」と書いてあり、正面から見て左には増長天、右には広目天。後ろから見て左には多聞天、右には持国天がいる四天王門です。江戸時代に建立したものを、昭和59年に再建したものだそうです。

四天王門をくぐると、右手には大天狗・小天狗の像が、左手には願叶輪潜(ねがいかなうわくぐり)があります。大天狗は手に団扇を持っており、人々の煩悩を吹き飛ばしてくださるそうです。小天狗は小刀を持っており、人々の弱い心を断ち切ってくださるとのこと。

写真を撮る用の団扇も置いてありますので是非天狗様とセルフィーを撮ってみてください。

願叶輪潜
Photo by Tsubaki in May 20, 2018

左手にある石造りの願叶輪潜は、願いを強く念じて、輪をくぐる際には煩悩を払い、その先にある大錫杖を鳴らすと願いが叶うといわれています。

この記事を書いている際に知ったのですが、大錫杖を鳴らす際には願いと共に、名前と住所も唱えたほうが良いそうです。

「もっと早く知りたかった…」

大本堂
Photo by Tsubaki in May 20, 2018

願叶輪潜からまっすぐ進んでいくと、お土産ものの通りがあり仁王門に向かって階段を上ります。

さて、仁王門をくぐると大本堂です。開山時のご本尊の「薬師如来」と現在のご本尊である「飯縄大権現」が祀られています。飯縄大権現は元々薬師如来を守る神様だったそうです。

本社(権現堂)
Photo by Tsubaki in May 20, 2018

更に階段を上がると、まるで神社のような朱色の社殿が見えます。「本社(権現堂)」です。

先ほど「まるで神社のような」と書きましたが、実はまさに神社なのです。

「薬王院ってお寺でしょ?」と思うかもしれませんが、明治時代に「神仏分離(神と仏、神社と寺院をはっきり分けること)」の令が出るまでは、神道と仏教をはっきりと区別はしていませんでした。これを神仏習合といいます。

今でも神社の中にお寺があったり、お寺の中に神社があったりします。今回はまさにそのうちの一つです。

よく見ると、白狐や龍などの彫刻も綺麗で、見ていてとても楽しい社殿です。また、この権現堂の周りにはお堂や稲荷社等があります。

奥の院
Photo by Tsubaki in May 20, 2018

更に奥に行くと、「奥の院」という不動明王が祀られているお堂があります。

薬王院の飯縄大権現は不動明王の変化したお姿だと考えられている時代もあったため、不動明王を祀っているのではと思います。

奥の院を抜けて、再び急勾配の道を15分くらい進むと山頂に到着します。レストランがあったり、ビジターセンターがあったりと一人でも色々楽しめます。お弁当を持ってピクニックもよいですね!景色も綺麗に見えますし、天気が良ければ富士山も見えます。

この日は富士山が見えたのですが、私が見たときは頂上に雲がかかっており、そこだけ見えませんでした。

降りは楽に!リフトに乗ってみよう!

リフト
Photo by Tsubaki in May 20, 2018

せっかくなので、帰りはリフトに乗ることにしました。

ケーブルカーは個人的に少し窮屈な感じがするのですが、リフトは前面に景色が広がり、天気が良い日は風も感じることができてとても心地よいです。

終盤になるとスタッフさんが写真を撮ってくださるので記念に一枚買うのもいいですね!

高尾山を降りて…

とっても楽しかったです。

私は屋久島や富士山と行ったかなり本気の登山スポットには何度か出かけたことがあるのですが、それと比べると高尾山はもっとハイキング感覚で登ることができます。道も舗装されていますし。

お土産物やお店も度々あるので飽きが来ないですし、ちょうどよいときに腹ごしらえや休憩もできます。

何より立派な木々が生い茂っていて、天気の良い日は日差しが樹の間から漏れていて、登山しているにも関わらず気持ちよさを感じていました。

薬王院で感じたのは、薬王院が私たち人間のことを思って建てられているということです。

四天王門にはそれぞれの神様が「人間(もしくは社会)を見守っています」という言葉で締めくくられており、また天狗も人間の煩悩を吹き飛ばしたり、断ち切ったりしてくれるということで、薬王院建築の中心は神様を祀ると共に社会を守ろう・世界を良くしようという考えだったのではないでしょうか。

大本堂には「世界平和」が掲げられており、多くの違った神様が祀られている薬王院にぴったりくる言葉だなあとつい納得してしまいました。

都会の喧騒にげんなりし、悩み事ができたときはぜひ足を伸ばしてください。神様があなたを癒し、天狗が煩悩を吹き飛ばしてくれるかもしれません。

アクセス

最寄り駅:京王線「高尾山口駅」