昨年世界遺産に決定した五島列島一帯のエリア。福江島や上五島などは比較的アクセスが簡単なので両行会社も一斉にツアーをだしていますね。
私がおすすめするのは五島列島の世界遺産関連エリアの中でもアクセスが難しいと言われている野崎島。
野崎島の場所や行き方、行く時の注意点、楽しみ方などまとめてみました。
野崎島の場所は? 行き方などを詳しく解説

まず小値賀島に渡る必要がある
野崎島は五島列島の中にあるほぼ無人島の島で、五島列島の中でもアクセスがしにくい場所と言われています。野崎島に行くためにはまずお隣の小値賀島に渡る必要があります。
小値賀島に行くには佐世保、もしくは博多から船に乗る必要があるんですが、博多からだと8時間、佐世保からだと3時間半の長丁場になります。
また佐世保港からは高速船も出ていて高速船だと1時間半ほどで到着することが出来ますよ。
小値賀島で2泊する前提で行きましょう
船の時間の関係などもあるため、小値賀島に2連泊・・・理想を言うなら3泊することをお勧めします。
野崎島に渡るにはシータクシーを雇うのでない限り、毎日船は朝と午後の2便しか出ていません。そのため前日に小値賀に到着し、翌朝早朝に野崎に渡って夕方帰ってくる感じになります。
小値賀島も色々と見どころがありますので、個人的には是非小値賀島観光の時間もキープして3泊4日していただくのが良いのではないかと思います。
佐世保からフェリーに乗って小値賀島へ

乗船前にランチの用意を
私は佐世保駅近くのホテルに前泊し、朝出るフェリーに乗船しました。時間的にお昼ご飯を船上で頂く形になるので、何かお弁当を買っておくといいと思います。船内にもカップラーメンの自販機は置いてありますが、せっかくなら船旅も楽しみたいですよね。
私はせっかく佐世保に来たので佐世保バーガーを買って乗船し、船上で頂きました。風が強くて少し寒かったですが潮風がとっても気持ち良かったですよ。
・・・それにしても最大サイズの佐世保バーガー・・・大きい。写真は椅子に座った足の上にバッグを置き、その上にバーガーを置いているんですが、太ももが完全に隠れました(笑)
食べきれずに残りは小値賀についてからのおやつになったのは言うまでもありません。

乗船前に買っておいた方がいいもの
小値賀島までの距離が長い事と、太平洋をつっきるので波が非常に荒いです。時間も長いので必ず酔い止めの購入を忘れずに!
佐世保だとJR佐世保駅の右手のビルの中に薬局があるのでそこで購入が可能ですが休みの場合もあるので、出来ればあらかじめ用意しておいたほうがいいでしょう。
船に乗り慣れていない方は、小値賀へ渡る往復分と野崎に渡る往復分、最低4回分を用意しておくことをおすすめします。
また野崎島に渡るためにはおぢかアイランドツーリズムさんへの申し込みが必要です。HPから申し込みが必要なのであらかじめ申し込みも忘れずにしてくださいね。
おぢかアイランドツーリズム申し込みフォーム
http://ojikajima.jp/category/contact
小値賀島で島時間をたのしむ

おぢかアイランドツーリズムに上陸のご連絡
いよいよ小値賀島に到着します。のんびりとした漁港が広がります。
小値賀島に到着したら一番最初におぢかアイランドツーリズムさんを訪れましょう。フェリーが付く港に併設されているのですぐにわかります。
野崎島への観光はすべておぢかアイランドツーリズムさんが対応しています。宿泊する民宿なども事前に相談すれば色々と教えてくれますよ。
夕暮れの小値賀散策は地元のひととの交流も楽しめる

宿泊した宿に荷物を置き、少し徒歩で島の中を散策してみることにしました。
なんとなく海辺や街の中をぶらぶらしていると、海辺の道で地元のおじいちゃんに出会いました。
「あそこ、見えるかい?茶色くなってるだろ?あれは酸性雨が原因なんだよ」
特に気にもせず通り過ぎようとしていたら突然話しかけてきたおじいちゃん。しばらくおじいちゃんと小値賀の生活の様子や野崎島の事など立ち話をしました。
ひとしきりおしゃべりをしたあとおじいちゃん、
「どこに泊まっているんだい?」と。
民宿の名前を言うと、送って行ってあげるよと、古い町並みの中を案内しがてら民宿まで送って行ってくださいました。なんとも親切なおじいちゃんです。
島では、島民に積極的に声をかけてみるといいと思います。道が分からなくなった時にもぜひ。みなさん、観光客の声かけには親切に対応してくれますよ。
小値賀島の観光巡り

おぢかアイランドツーリズムさんなどで相談すると小値賀の島内を車で案内してくれることがあります。野崎島とはまた違った、いろいろな景色や神社、教会といったものも沢山見る事が出来ます。
文字通り真っ赤な石が広がっている赤浜や天然の海水の流れで出来たポットホールなど、小値賀島も見どころが沢山あるんです!
民宿以外の宿泊方法も大人気

小値賀には民宿以外にも民泊システムがあり、地元在住のご家庭にそのまま泊まらせていただく事(ホームステイ)が出来て大人気です。島の美味しいお料理や畑仕事の体験なども楽しめますよ。
また一棟貸の古民家での宿泊も可能で、そちらも大変な人気です。
野崎島に渡るための準備

野崎島で食べるものは前日までに用意しておくこと

野崎島はほぼ無人島で人が住んでいない島のため飲食の施設がなく、島での飲食はすべて小値賀で用意をしていく必要があります。
また、小値賀島の中には何軒かスーパーなどのお店がありますが基本的にどのお店も閉店時間が早いです。
なので前日の午後には島で食べるものの調達のためにお買い物をしておくとよいでしょう。
島の中で比較的大きいスーパー、エイダンさんではパンやカップ麺など簡単に食べられるものを買う事が出来ます。
その際に長崎にしか売っていない珍しいお菓子や食品もあるのでお土産に買っていくといいかもしれませんね。
写真は私が実際にエイダンさんで購入したものです。都内ではお目にかかったことがないような珍しいお菓子やラーメンをいっぱい買いました(笑)
早い時間だと島のパン屋さん「こじこじパン」さんで美味しいパンを買う事も出来ますよ。ただしこじこじパンさんは島でも大変人気のパン屋さんのため午後にはもう閉店している事もありますので、もしパンを買うなら早めの時間がおすすめです。
野崎に行くための服装
野崎島に行く方は、おぢかアイランドツーリズムさんのHPでも詳しく見る事が出来ますが、服装や靴などの注意点があります。また空調なども基本的にないので衣服で調節をする必要があります。
必ずチェックしておいてくださいね。
おぢかアイランドツーリズム ご来島の前に
ところで、必ず必要な物のリストの中に「帽子」があるんですが、実は地元の衣料品店さんでは農作業用の帽子が数百円で販売されています。
これが結構便利で、首をすっぽりとカバーしてくれ虫よけには非常に効果的。ただデザインが完全に農作業用なのでファッションを楽しみたい人にはお勧めできませんが、虫よけ最優先されるかたにはおすすめです。
喫煙者には少し厳しい観光地になる
野崎島は島全体が世界遺産として長崎県と小値賀島の管理下にあり、ゴミを捨てる事や島のものを持ち出すことが一切許されません。
唯一廃棄が許されているのは島唯一の休憩施設内にある自動販売機のゴミ箱へ缶を棄てる事だけ。
当然ながら環境保護のために島内の大部分は喫煙も禁止。島で過ごす時間も結構長いので、喫煙をされる方は船に乗る前に町営船乗り場のところにある喫煙所で済ませておくとよいでしょう。
島内では野崎港と休憩施設内の所定の場所のみ喫煙可能ですが、他のエリアを散策する場合にはこのどちらか二か所に戻ってくるまではタバコは吸えません。
なお、野崎島に行く際には船代とは別に休憩施設使用料1000円が必要です。島内に約7時間も滞在することになるため休憩施設の利用は必須となります。(お食事も原則としてここでしか食べる事は出来ないです)
野崎島の観光スポット

では野崎島の観光スポットを紹介していきますね。
島に上陸した際に、島内の見どころや島内を歩く際の注意点などが詳しく書かれたパンフレットがビジターセンターで配布されます。なくさないように気をつけましょう。
町営船で早朝に出発!

町営船に乗って30分ほど走るといったん六島に立ち寄ったのち、野崎港に到着します。海からはお天気が良ければ、王位石(おえいし)を見る事も出来ます。
また船内では野崎島での過ごし方やおすすめのスポットなども映像で紹介されています。

王位石は島にある神社近くにある巨大石で、島の中にある沖ノ神島神社という神社の後ろに鳥居のような形になっています。
これは人工物なのか元からあるのかも実はよくわかっていないんだそうです。神社自体もなんと飛鳥時代からあるものという事でなんとも謎が多いんですね。
この王位石も、近くで見たい方はガイドツアーに申し込むと行くことが出来ます。ただし往復で5時間ほど山を登ったり下りたりとなかなかハードではあります。
野首集落跡周辺で一休みできる

有名な旧野首教会や島唯一の休憩所となっている野崎小中学校校舎跡もここにあります。島の中心部にあり、港からは一応ここが一番近いんですが、この場所に行くだけでも普段運動不足だとそうとうきついです。
休憩所では簡単な調理なども出来るので食材を持ち込んでここでお料理をする方もいらっしゃいますし、料金を支払えば宿泊も可能です(先にも触れましたが、宿泊しない場合でも1000円の使用料が必須です)。
また校庭跡の広場ではバーベキューも楽しむことができ、機材類も貸し出しがあるのでやってみたい方はおぢかアイランドツーリズムさんに相談すると良いでしょう。
旧野首教会

長渕剛の曲、「エイメン」のPVなどにもなった旧野首教会。ここは島に住んでいた潜伏キリシタンの子孫が、禁教が解けたのちに自分たちでお金を出し合って建てた教会です。
明治時代に教会建築の名匠と言われていた鉄川与助氏に、今のお金で約3億円にもなる工賃を、わずか20人弱の野首集落の住民が現金で支払ったといいます。
住民たちはどうしても自分たちの教会がほしいと、毎日の食事を2回に減らし、キビナゴ漁で住民全員でお金を貯めました。
鉄川氏はこんな貧しそうな人たちが本当にお金を払えるのかと当初心配したそうですが、約束の日までに1円もかけることなく全額の支払いをしたのです。
お金はみんなで少しずつ貯めたため、大きなカメに全部小銭で入っていたそうです。
今建っている野首教会は実は当時のものが風化してきたために改修・復元されたものなのですが、中は美しいステンドグラスで飾られ、趣のある素晴らしい教会でした。
今も小値賀の人が毎年この教会でコンサートを開いており、観光客も見る事が出来ます。
野首集落跡地

野首集落から最後の住民がいなくなってもうすぐ50年が経過します。その間にほぼ無人島となってしまったこの島では野生のシカが大量に増え、鹿のおかげで島では草や樹木はあまり沢山ありません。短く柴のようになった草がえんえんと続く、サバンナのような場所になっているのです。
その合間に棚田やがれきのあとのようなものが点在しています。これが集落の跡。わずか50年なのですが誰も住んでおらず鹿が走り回るためにこのような状態になっています。
美しい東シナ海がのぞめる野首港
昔は、野首地区の住民はこの野首港から小値賀島に行っていたんだそうですが、今はこの野首港は基本的に使われることはなく、無人のままです。
途中には腰を下ろせる休憩所が設置されていて、休憩所から海を眺める事が出来ます。
かつてはこの島にウミガメが産卵に来ていたこともあったそうです。真っ白い砂浜が、まるで日本ではないようですね。
夏にはここで海水浴も出来ます。

無人島で何の音もしない、風と木々のざわめきと打ち返す波の音だけをじっと座ったまま聞いていると、心の底から癒される、そんな気分になる事が出来ます。
舟森地区の十字架群
野崎島には元々、野崎地区、野首地区、舟森地区と3つの地区がありました。このうち野首と舟森には潜伏キリシタンが住んでいました。
舟森には今はもう集落跡もほとんど残っていないのですが、真新しい十字架を沢山見る事が出来ます。
この十字架にまつわる話があります。
舟森地区のキリシタンと小値賀島の廻船問屋
まだキリスト教が禁教だったころ、平戸で何やら相談をしている3人連れの親子を小値賀島に住んでいる廻船問屋が見つけました。親子はキリシタンで、とうとう自分たちがキリシタンである事が見つかってしまったため明日にも処刑されるので、苦しい拷問や処刑に会う前に3人で死のうと相談していたのです。
廻船問屋はこの3人を気の毒に思い、自分の船にかくまって野崎島に逃れさせました。やがてこの3人は野崎島の一番奥、舟森という場所に住むようになったのです。
これは実話で、小値賀島には廻船問屋の末裔という方が住んでおり、舟森地区の十字架は実はこの方が立てているのだそうです。
廻船問屋さんの子孫である田口さんは民宿を経営されています。

舟森の子孫の方々との交流は今でもつづいているそうです。
またこの話は「舟森縁起」として田口さんが脚本にしており、小値賀島では今でもお芝居として上映されています。
野崎島の主、野生のシカたち

野崎島の中を散策していると、どこにいっても野生のシカに出会います。本当に数が多くて、10匹以上の群れに出会うことも珍しくありません。中には大きな鹿もいたり、至近距離からじっと見つめられることも。
実は私も島の中で数匹の鹿からすぐ目の前でじーっと見つめられていたのですが野生動物相手にどんな反応が来るかわからず怖かったので写真は撮る事ができませんでした。
小心者の私がかろうじて遠くからとった鹿がこちらです。
実はホラーゲームの舞台にもなったことがある

かなり昔ですが、「CMが怖すぎる」と話題になったことがあるホラーゲーム、Sirenのモデルになったのはこの島。
ゲームの中に出てくる風景や教会、学校などはまさにそのままの姿を見る事が出来ます。気になる方はゲームの配信などをちょっと見てからいくと、より楽しめるかもしれません。
まとめ
- 小値賀島の観光も楽しい
- 野崎で飲食するものは小値賀島で用意が必要
- ほぼ無人島の大自然に触れられる
- 潜伏キリシタンの歴史に触れられる
- シカがかわいい
天候が悪くなると行けなくなってしまいますが、実際に行ってみると他ではまず見る事ができない手つかずの大自然に圧倒されます。
運動不足の方には結構きついルートにはなりますが、それでも歩いてみてよかったときっと思えるはず! 疲れた身体も小値賀島の優しいひと時にきっと癒されると思います。
野生のシカを間近でいっぱい見てみたい人にもおすすめです。長期のお休みの期間に思い切って野崎観光にチャレンジしてみてくださいね。

旅行大好きなおばちゃんライター。ローカル線をこよなく愛している鉄子ですが温泉巡りやグルメ探訪も大好き。すでに社会に出た息子二人とは友達のような関係。ただいま気ままな一人暮らし。全都道府県に友達を作って日本一周するのが当面の夢ですが体力の衰えとの勝負なのでそろそろ鍛えなきゃなーと画策中。