街の発展を見つめる慈愛の眼差し…鎌倉大仏

Photo by Manabu Kato in Jun 17, 2019

長い日本の歴史に、この国を統一した時代を刻む神奈川県鎌倉市。周囲を囲む緑豊かな山々と正面に広がる海の景勝、そして今も多く残る名所旧跡の数々は、800年以上の時代が経過した現在も、この街をよりいっそう色あざやかに輝かせています。

旅行大好き人間である私・加藤学が住んでいるのは、同じ神奈川県の箱根町。ここから東へ約50kmの近距離にも関わらず、これまでなかなか足を運ぶ機会が得られなかった鎌倉市へ、新緑まぶしい2018(平成30)年5月と6月の2度にわたり行ってきました。

訪れたのは鶴岡八幡宮と長谷寺、そしてここ高徳院・鎌倉大仏…いずれも鎌倉を代表する名所です。

Photo by Manabu Kato in Jun 17, 2019

思えば私は小学6年生の時に奈良で、中学3年生の時に鎌倉で、いずれも修学旅行の時に初めて大仏さまと出会いました。…あの頃はまだあどけなかった私も、今では50歳の一歩手前!!

35年前後の時を経た昨年、わずか1ヶ月の間に奈良と鎌倉を訪れる機会を得たのです。…そして実はつい先日、元号も新しく「令和」となった2019年6月17日、ほぼ1年ぶりに大仏さまへ足を運び、新緑と深緑に彩られた鎌倉の街で、時代を超えて心洗わせて頂きました。

さあ、いっしょに初夏の鎌倉大仏へ出かけましょう。

これで3回目となる江ノ電で鎌倉へ…

6月17日朝、箱根町仙石原の自宅を出発。昨年と同じくJR東海道線で藤沢駅へ、ここから今回で3回目となる江ノ島電鉄(江ノ電)に揺られること約30分。藤沢駅から数えて11個目の長谷駅に到着しました。

Photo by Manabu Kato in Jun 22, 2018
Photo by Manabu Kato in Jun 17, 2019

この日は梅雨の合間の晴天。車窓からは相模湾の向こうに、江の島と箱根の山々がきれいに見えました。

大仏さまへとつづくメインストリート

ほぼ1年ぶりに降り立った長谷駅からは、長谷寺そして高徳院へ向かって長谷通りを歩きます。有名グルメ店やカフェ、みやげ店が建ち並ぶ商店街には、このような幟(のぼり)が…。

Photo by Manabu Kato in May 21, 2018
Photo by Manabu Kato in Jun 17, 2019

初夏とあって朝から気温はぐんぐん上昇。長谷通りはこの日も多くの人々で賑わいました。

昨年私が記事を担当しました、長谷寺です

長谷駅から徒歩約5分余り、長谷寺に少し寄って行きましょう。思い出すのはちょうど1年前…そうです、私は鶴岡八幡宮とここ長谷寺の記事を担当させて頂きました。

Photo by Manabu Kato in Jun 17, 2019
Photo by Manabu Kato in Jun 22, 2018

久しぶりに見るシンボルの赤提灯、やはり感慨深いですね…。

長谷寺から、やがて高徳院の前へ

そして長谷寺から約5分、大仏さまのある高徳院仁王門に到着しました。左右両側には、お寺に邪気や悪者が入るのを防ぐ仁王像(仁王さま)が、厳しい顔つきで目を光らせています

Photo by Manabu Kato in Jun 17, 2019
Photo by Manabu Kato in Jun 17, 2019

よくぞ来られた、大仏さまをしっかりと拝んで行かれよ!!

そして…大仏さまにやってきました!!

仁王門を通り拝観手続きをすませたらいよいよ高徳院の境内へ。まもなく、あざやかな緑の中に大仏さまが姿を現します。私にとっては中学3年生時の1984(昭和59)年4月と、2018(平成30)年5月につづき3回目。これで昭和~平成~令和と3つの時代にわたって、大仏さまを訪れることができました!!

Photo by Manabu Kato in Jun 17, 2019

大仏さまのある高徳院(こうとくいん)は、正式名称を「大異山高徳院清浄泉寺(だいいざんこうとくいんしょうじょうぜんじ)」と呼ぶ浄土宗のお寺で、ご本尊は阿弥陀如来像…つまり大仏さまです。

実は高徳院と鎌倉大仏さまについては、詳しい歴史資料がほとんど残されておらず、創建された時代や経緯については不明な点が多いのです。…でも鎌倉時代に作成された複数の歴史書には、当時すでに「建立が始まっていた」「半分ほど出来上がっていた」「ほぼ完成していた」などと記録されているので、「鎌倉時代に建てられた」というのが最も有力説のようですね。

そして近年の調査で、今でこそ建物に入っていない大仏さまが、昔は建物の中に入っていた…つまり「大仏殿に入っていた」ことがわかってきました。大仏殿…といえば奈良・東大寺を思い出しますが、ここ鎌倉大仏にも大仏殿があったと言われているのです。

何度倒れてもよみがえった鎌倉のシンボル

昔は「大仏殿」に入っていたと言われる鎌倉大仏さま。その大仏殿がいつなくなったかについても、はっきりわかっていません。室町時代の1486(文明18)年に鎌倉を訪れた万里集九(ばんりしゅうく)というお坊さまが、「大仏さまは建物に入っておらず、姿がまともに現れていたよ」…という旨を記録していることから、この時もう大仏殿はなく、いわゆる「露坐(ろざ)の大仏」の状態であったことがわかります。

そして長い年月の間に、暴風雨や地震で何度も倒壊していたこともわかっています。

Photo by Manabu Kato in Jun 17, 2019

その後江戸時代中期になり、祐天(ゆうてん)というお坊さまが、雨風にさらされつづけすっかり傷ついてしまった大仏さまを見て、江戸浅草の有力商人と協力しあって修復作業を行いました。

1923(大正12)年9月1日におきた関東大震災では、基盤の部分が崩れて1mほど沈下してしまったこともあります。…そして1959(昭和34年)と2015(平成27)年には大規模な修復工事が実施され、今も建物に入ることなく、鎌倉のシンボルとして街を見守っているのです。

鎌倉大仏さまの大きさは…台座を含めて高さ13.35m、重量は約121トン。

少し失礼します、お顔のアップを…

大仏さまの特徴である頭の「ボツボツ模様」。実はこれ大仏さまの髪の毛なのです!!この模様は、厳しい修行を積んで心の迷いを払い、自分自身の本当の生き方を得る「悟りを開いた」証明。

Photo by Manabu Kato in Jun 17, 2019
Photo by Manabu Kato in Jun 17, 2019

つまり、とても偉大な仏様(ほとけさま)であるという意味なのです。

ちなみに…こちらは奈良の大仏さま

Photo by Manabu Kato in April 20, 2018
Photo by Manabu Kato in Jun 17, 2019

そして鎌倉の大仏さま…ちがいがわかるでしょうか。

奈良の大仏さまは、右手をかざし、左手を膝に置き上に向けています。右手の形は「施無畏印(せむいいん)」と呼ばれ、人々に「怖がることはない、安心しなさい」と説き、左手の形は「与願印(よがんいん)」と呼ばれ、人々に「あなたの話を聞こうではないか」…と伝えているのです。

Photo by Manabu Kato in April 20, 2018
Photo by Manabu Kato in Jun 17, 2019

鎌倉の大仏さまは、両手を前に組む「座禅(ざぜん)」の姿をしています。これは「定印(じょういん)」と呼ばれ、「私は今、瞑想(めいそう)をしているのだ」…という意味なのです。

まさに今、瞑想している最中の大仏さま

どうすれば世の中の人々が、幸せに生きられるのか…考えておられるのです。

Photo by Manabu Kato in Jun 17, 2019
Photo by Manabu Kato in Jun 17, 2019

だから、本当は騒いではいけないのです。静かにしましょう…。

大仏さまの中にも入れますよ!!

大仏さまの中・胎内(たいない)にも入ることができます。(有料20円・1度に入れるのは30人未満)

天井の穴は大仏さまの首の部分。茶色く見えるのは、錆(さび)や腐食を防ぐ「繊維強化プラスチック」です。

Photo by Manabu Kato in Jun 17, 2019
Photo by Manabu Kato in Jun 17, 2019

ここが、ちょうど体の前で両手を組んでいる部分です。

大仏さまを別角度から眺めましょう

再び外へ出てきました。大仏さまを右後方から仰ぎ見ると、背中には胎内参拝者のために窓が。

Photo by Manabu Kato in May 21, 2018
Photo by Manabu Kato in May 21, 2018

そして右前方から…、どこから眺めても気高く迫力がありますね。

最後はアジサイと仁王さまに感謝を…

いよいよ大仏さまでの時間も終わりに近づいてきました。高徳院境内に咲く満開のアジサイです。

Photo by Manabu Kato in Jun 17, 2019
Photo by Manabu Kato in Jun 17, 2019

そして、仁王さまともお別れです。

Photo by Manabu Kato in May 21, 2018

またいつの日か、来られるがよい!!

これからも鎌倉を見守りつづける大仏さま

…今から半世紀以上前の1956年に、最高栄誉の作品賞をはじめアカデミー賞5部門を受賞した「八十日間世界一周(Around the World in 80 Days)」という超大作映画がありました。まだ飛行機などなかった1872年のイギリス。気高い紳士が「80日間で世界を一周してみせよう」と公言し、召使いをお供に世界一周旅行に出る大アドベンチャー。このコースには日本も入っており、なんと鎌倉大仏さまが登場してくるのです!!

Photo by Manabu Kato in Jun 17, 2019

今では航空機の発達と進化で、ここ鎌倉にも海外から多くの人々が訪れるようになりましたが、当時の日本はまだはるか遠い夢の国だったのでしょう。世界映画史上に輝く名作に登場し、そして鎌倉のシンボルとなった大仏さま。日本らしい緑豊かな景色にドーンとそびえる姿は、特に海外から訪れたみなさんを惹きつけるようですね

…いよいよ来年・2020年は東京オリンピック・パラリンピックが開催されます。ここ鎌倉にも世界の国々からいろいろな人々が、それぞれの日数をかけて訪れるでしょう。国際観光都市となりつつある鎌倉の街を、大仏さまはこれからもずっと見守りつづけます。

最後に掲載した写真は、大仏さまと緑のもみじ、そして石灯篭を組み合わせてみました。

みなさま、日本の風景を感じてくだされば幸いです。

鎌倉大仏(高徳院)への交通機関と概要

鎌倉大仏(高徳院)グーグルマップ

鎌倉大仏(高徳院)への交通アクセス

電車・徒歩でのアクセス

  • 東京方面からは、東京駅でJR東海道線、または新宿駅で小田急江ノ島線に乗車し、約50~60分の「藤沢駅」下車。江ノ島電鉄に乗りかえ、約30分の「長谷駅」で下車。(大人300円・小人150円)。
  • 鎌倉方面からは、鎌倉駅で江ノ島電鉄に乗車し、約5分の長谷駅で下車。(大人190円・小人100円)。
  • 長谷駅からは、長谷通りを徒歩約5分弱で長谷寺前。さらに約5分で高徳院仁王門前に到着します。尚、長谷通りは歩行者と車で大変混雑するので、充分注意して歩きましょう。

鎌倉大仏(高徳院)・概要

  • 拝観時間 4月~9月は8時00分~17時30分、10月~3月は8時00分~17時00 分。(入場は閉門の15分前まで)。
    大仏胎内拝観時間は8時00分~16時30 分 (入場は閉門の15分前まで)。
  • 年中無休 (ただし、寺務所や境内売店は臨時休業の場合あり・要確認)。
  • 拝観料 2019年8月31日まで
    一般と中高生200円、小学生150円、幼児 (未就学児) と、鎌倉市福寿手帳ご持参の方は無料。
  • 拝観料 2019年9月1日から、以下のように変更されます。
    一般と中高生300円、鎌倉市福寿手帳ご持参の方300円、小学生150円と幼児(未就学児)無料は変更なし。以上の他、障害者無料対応あり、団体割引なし。
  • 大仏胎内は、拝観料とは別に20円。

高徳院寺務所、直営売店

大仏さまに向かって右側にあり、ご朱印は寺務所で9時00分から頂けます。

  • 営業時間 8時00分~16時45分 (ご朱印受付は平日15時30分、土日祝日15時00分まで)。
  • 上記の他に仁王門を入って左側と、大仏さまに向かって左側にそれぞれ売店があり、名物のお菓子や各種おみやげを販売しています。(店頭および店内は、撮影禁止)
  • 電話…0467-22-0703
  • 詳細は「高徳院・公式サイト」をご覧ください。