古き歴史と信仰の心がやどる長谷寺

赤い提灯と「門かぶりの松」が迎える長谷寺の山門
赤い提灯と「門かぶりの松」が迎える長谷寺の山門
Photo by Manabu Kato in Jun 22, 2018

日本を代表する有名観光地の神奈川県鎌倉市。800年以上もの歴史を誇るこの街には、実に150ヶ所以上ものお寺が存在しています。

貴重な仏像や文化財が保存されているお寺、美しい花がたくさん咲くお寺、歴史上の有名人物が関わったお寺、様々な言い伝えのあるお寺、いい景色が眺められるお寺…鎌倉の街にはこのようなお寺が数多く見られ、寺社仏閣巡りが好きな方にとってはこの上ない充実した時間が楽しめるでしょう。

連日多くの人々が訪れる鎌倉のお寺の中でも、特に親しまれているのが長谷寺(はせでら)です。

鎌倉の名所と言えば? そうきかれれば誰もが「大仏さま」、「鶴岡八幡宮」そしてこの「長谷寺」と「3本の指」に挙げられるほど知られています。

人々から崇拝される観音像、いっぱいに咲くアジサイの花、少しスリルの味わえる洞窟、海の見える丘…ここ長谷寺に旅行大好き人間の私・加藤学は2018年5月21日に一度訪れました。この時は午前中に鶴岡八幡宮、午後から大仏さまと長谷寺を巡りましたが、夕方近かったこともあってごく短時間の滞在で終わってしまいました。

しかし「紫陽花(あじさい)が満開を迎えている」と聞き、ちょうど1ヶ月後の6月22日に再び駆け付けたのです。

紫陽花の咲き誇る6月。鎌倉を代表する有名なお寺で一時を過ごしました。

さあ、いっしょに初夏の長谷寺へ出かけましょう。

二度目の江ノ電で再び鎌倉へ

6月22日(金)、前回と同じく早朝に箱根町の自宅を出発し小田原駅からJR東海道線で藤沢駅へ。

江ノ島電鉄(江ノ電)に揺られること30分、8時55分頃に長谷(はせ)駅に到着しました。

長谷駅で行き交う江ノ島電鉄
長谷駅で行き交う江ノ島電鉄
Photo by Manabu Kato in May 21, 2018
江ノ島電鉄・長谷駅
江ノ島電鉄・長谷駅
Photo by Manabu Kato in Jun 22, 2018

長谷駅から長谷寺への道

朝早い時間にも関わらず、江ノ電長谷駅は長谷寺や大仏さまのある「高徳院(こうとくいん)」へ向かう観光客や修学旅行生で大賑わい。改札を出れば、もうそこは長谷寺へと続く県道32号線「長谷通り」です。

長谷通り
Photo by Manabu Kato in Jun 22, 2018

ちょうど修学旅行シーズン、学生のみなさんが多く見られました。

長谷通り
Photo by Manabu Kato in Jun 22, 2018

長谷駅から5分、「長谷観音前」の信号を左折すれば、長谷寺はすぐそこです。

海をさまよう観音像が流れ着いた地

「長谷観音前」の信号を左へ入ると、緑深い山の中腹に「長谷寺」が姿を現しました。

時刻はまだ午前9時を過ぎたばかりでしたが、もうお寺へ向かう参道は人、人、人…。長谷寺の人気の高さをうかがわせます。多くの人々のお目当てはもちろん紫陽花でしょう。

長谷寺。下に山門が、上に観音堂が見えます。
長谷寺。下に山門が、上に観音堂が見えます。長谷寺は山麓部を「下境内(しもけいだい)」、山腹部を「上境内(かみけいだい)」と呼んでいます。
Photo by Manabu Kato in Jun 22, 2018

鎌倉市の真南、海岸から約400mの山腹に建つ「長谷寺(はせでら)」は伝説によれば、古く奈良時代の736(天平8)年に、「徳道上人(とくどうしょうにん)」というお坊様が開いたとされていますが、徳道上人は現在の奈良県桜井市にある「大和国長谷寺(やまとのくにはせでら)」も建てています。

徳道上人は721(養老5)年に、クスノキの大木を使って2体の「十一面観音像」を2人の仏師に作らせ、1体を大和国長谷寺のご本尊とし、もう1体を「流れ着いた地で人々を救ってほしい」と願いをこめ海へ流しました。

15年もの間、海を漂流しつづけた観音像は、現在の神奈川県三浦半島の海岸に流れ着き、新しく建てられた長谷寺に安置されたのです。

この十一面観音像が保存されていることから、長谷寺は「長谷観音(はせかんのん)」とも呼ばれています。

みなさん、長谷寺へようこそ!!!

長谷駅から約10分、大きな赤い提灯(ちょうちん)が堂々と迎える長谷寺山門の前に到着しました。

長谷寺のシンボル大きな赤提灯
長谷寺のシンボル大きな赤提灯。迫力ありますね!!
Photo by Manabu Kato in Jun 22, 2018

この提灯をバックに多くの人々が、次から次へと記念撮影をしてゆきます。

奈良時代に建てられたとされる長谷寺には、日本の歴史に輝く有名人物が多く関わっています

室町幕府を開いた初代将軍の足利尊氏(あしかがたかうじ)公、京都の金閣寺を建てた室町幕府3代将軍の足利義満(あしかがよしみつ)公、戦国時代の武将でここ相模国(現在の神奈川県)を治めた北条氏康(ほうじょううじやす)公などが、仏像や建築物を修復・新築したり、大きな寄附を行ったりしているのです。

そして何と言っても、戦国の世を治め江戸幕府を開いた徳川家康(とくがわいえやす)公から「朱印状」という公的文書を頂き、お寺やその領地を保証されているのです。

天下の徳川家康公に認められたお寺なのですね。

ちなみに「長谷寺」という名称の付いたお寺は、日本全国に240か所以上存在しています。

山門の前から左へ行くと拝観受付所(自動券売機あり)です。手続きをして長谷寺へ入りましょう。

紫陽花も御朱印も大人気の長谷寺

6月から「紫陽花シーズン」となる長谷寺。混雑を避けるための整理券「あじさい鑑賞券」が渡されます。

あじさい鑑賞券
Photo by Manabu Kato in Jun 22, 2018

長谷寺は、参拝者に押印する「御朱印(ごしゅいん)」も人気、これは紫陽花がデザインされた御朱印帳です。他にも春の桜シーズン、秋の紅葉シーズンに合わせたデザインの御朱印帳もあります。

御朱印帳
出典元:「御朱印と寺社旅の情報マガジン『ご朱印びと』」内「エリアで御朱印と御朱印帳を探す」より

さわやかな水音に耳を傾けてみましょう

中に入ればそこは長谷寺の下境内。向かって左右両側に、見るからに涼し気な2つの池が人々を迎えます。

左側は「妙智池(みょうちいけ)」、右側は「放生池(ほうじょうち)」と呼ばれ、周囲には多くの花々が咲き、その風情ある景色は、周囲を散策できる「回遊式庭園(かいゆうしきていえん)」として有名です。

妙智池(みょうちいけ)
妙智池(みょうちいけ)
Photo by Manabu Kato in May 21, 2018
放生池(ほうじょうち)
放生池(ほうじょうち)
Photo by Manabu Kato in Jun 22, 2018
放生池(ほうじょうち)
放生池(ほうじょうち)
Photo by Manabu Kato in May 21, 2018

新緑におおわれた水面に、竹の「筧(かけひ)」から流れ落ちる滝…日本ならではの景色ですね。

心をこめてさわってね…

妙智池を右に見ながら少し奥へ進むと、「梶山観音」と「ふれ愛観音」という2体の観音像があります。

「梶山観音」と「ふれ愛観音」
Photo by Manabu Kato in Jun 22, 2018

「ふれ愛観音 さわってお参り下さい」と記されてあるとおり、誰もが手でさわって拝みご利益を受けることができるという観音さまです。「さわらないでください」ではなく「さわってください」なのですね。

ふれ愛観音
Photo by Manabu Kato in Jun 22, 2018

ちょっとメタボな観音さま…?

幼子よ健やかに、そして安らかに…

妙智池の横で手を清め、上境内への石段を上ると、やや奥まった所に「地蔵堂(じぞうどう)」があります。

地蔵堂(じぞうどう)
Photo by Manabu Kato in Jun 22, 2018

2003(平成15)年に再建されたお堂の中には、金色に輝く「福壽地蔵(ふくじゅじぞう)」が納められ、子どもが健康に育ち、家族が平和に栄えるご利益を授けてくださると伝えられます。

お堂の裏手に立ち並ぶ「千体地蔵(せんたいじぞう)

福壽地蔵(ふくじゅじぞう)
Photo by Manabu Kato in Jun 22, 2018

水子(みずこ…生まれる前や生まれて間もない時に、何らかの理由で亡くなった赤ちゃん)を供養するお地蔵さまとされています。赤ちゃんたちの眠りが、静かに安らかでありますように…合掌。

ほほえましいお地蔵さま、やがて観音堂へ

長谷寺の境内には「良縁地蔵(りょうえんじぞう)」と呼ばれる、にこやかなお地蔵さまが3か所にあります。

長谷寺
Photo by Kentaro Ohno – 長谷寺

3つ全部見つければいいことがあるそうです。ぜひ見つけましょう!!

地蔵堂からさらに石段を上れば、そこは長谷寺の上境内。

長谷寺の上境内
Photo by Manabu Kato in Jun 22, 2018

目の前に観音堂が大きく姿を現します。

人々の前に崇高に立つ観音さま

1300年近い歴史の中で、何度も大きな火災や地震に襲われた長谷寺。1923(大正12)年9月1日に発生した「関東大震災」では、観音堂も倒壊してしまいました。現在の建物は1986(昭和61)年に完成したものです。

黒光りした柱と甍(いらか)が鮮やかな観音堂には、この長谷寺のご本尊である「木造十一面観音立像(もくぞうじゅういちめんかんのんりつぞう)」がそびえ立ち、人々の崇拝を集めています。

15年もの間、海を漂流し三浦半島に辿り着いた、あの観音さまであると伝えられます。

見晴らし台付近から眺めた観音堂
見晴らし台付近から眺めた観音堂
Photo by Manabu Kato in Jun 22, 2018

右手に錫杖(しゃくじょう…音の出る金具の付いた杖)を、左手に水瓶(すいびょう)を持つ、「長谷寺式十一面観音像」と呼ばれる長谷寺独自のお姿で、ほの暗い堂内にかすかに金色の光を放ちます。

高さは約9.2mあり、高徳院にある「大仏さま」に匹敵する大きさです。(堂内は撮影禁止)

Youtubeの動画がありますので、ぜひご覧ください。

(動画引用…カンテレchannel様「【公式】新TV見仏記~いざ!鎌倉編&鎌倉逍遥編~(4K)」2015/08/13公開)より、3分04秒 十一面観音像の登場シーンは0:25~0:30、1:33~1:42。

全国でも数少ないお寺の中のミュージアム

観音堂の左側、棟続きの場所に「観音ミュージアム」があります。

光り輝く「金色の観音さま」が迎えるこのミュージアムは、以前は「長谷寺宝物館」でしたが、2015(平成27)年10月に新たに完成しました。鎌倉の新名所と言ってもいいでしょう。

数多くの仏像をはじめとする重要文化財が保存・展示されている他、日本人に特に崇敬されている「観音菩薩(かんのんぼさつ)」の教えを、様々な資料や映像で紹介しています。

金色の観音さま
Photo by Manabu Kato in May 21, 2018

【観音ミュージアム】 ※長谷寺の拝観料とは別料金になります。

  • 入館料 大人(中学生以上)…300円、小人(小学生)…150円、
  • 入館受付時間…9時00分~16時00分(閉館は16時30分)、
  • 休館日…年中無休(ただし、展示替えや設備点検による臨時休館日あり)、
  • 詳細は「観音ミュージアムホームページ」をご覧ください。

源頼朝公と阿弥陀さま

観音堂の右側には「阿弥陀堂」があり、堂内には「厄除阿弥陀如来(やくよけあみだにょらい)」と呼ばれる阿弥陀如来像が鎮座しています。

阿弥陀堂
Photo by Manabu Kato in Jun 22, 2018

説によれば、鎌倉幕府を開き最高権力者となった源頼朝(みなもとのよりとも)公が、42歳の時に「厄払い」のために建てたと伝えられており、今も多くの人々が訪れます。

42歳…誰もが気にする年齢ですね。

厄除阿弥陀如来坐像

この阿弥陀さまは、本来長谷寺にあった像ではなく、鎌倉の別なお寺から移されたとも言われています。

厄除阿弥陀如来坐像
Photo by Manabu Kato in Jun 22, 2018

それにしてもなかなかキリリとした顔の阿弥陀さまだと思いませんか?

貝に願いをこめて…

阿弥陀堂の前から向かって右奥へ入ると、小さな赤い鳥居の向こうに何か白い物がずらりと並んでいます。

かきがら稲荷
Photo by Manabu Kato in Jun 22, 2018

ここは「かきがら稲荷」と呼ばれる神社で、いっぱい並んでいるのは「牡蠣(かき)」の貝殻です。

ご本尊の「十一面観音像」が、海を漂流し三浦半島の海岸に流れ着いた時、その身体に付いていた貝殻だと伝えられているのです。

今では訪れる人々が、それぞれに心に思う願いを書いて捧げる「絵馬」になっています。

「牡蠣(かき)」の貝殻
Photo by Manabu Kato in May 21, 2018

志望校に合格できますように… 彼氏ができますように…

初夏の長谷寺はさわやかに

梅雨の晴れ間とあって、この日は朝から大変蒸し暑くなった鎌倉市。しかし、長谷寺のあちこちでは初夏のさわやかさを感じました。阿弥陀堂のすぐ右にある鐘楼(しょうろう)は、深い緑に包まれます。

鐘楼(しょうろう)
Photo by Manabu Kato in Jun 22, 2018

夏に参拝する人々へ「ミスト」のサービスも…

ミスト
Photo by Manabu Kato in Jun 22, 2018

この景色を誰かといっしょに…

長谷寺上境内の西側には「見晴らし台」があり、目の前には相模湾や鎌倉市街、三浦半島方面の景色が広がります。ちなみに長谷寺の正式名称は「海光山慈照院長谷寺(かいこうざんじしょういんはせでら)」。

海の見えるお寺というのも全国には数少ないでしょう。

海の見えるお寺
Photo by Manabu Kato in May 21, 2018

多くの人々が、潮風に吹かれながら海の景色を楽しみます。

愛する人といっしょに…
Photo by Manabu Kato in May 21, 2018

愛する人といっしょに…

仲間といっしょに…
Photo by Manabu Kato in May 21, 2018

仲間といっしょに…

紫陽花を抱くお釈迦さま

観音ミュージアムの左側には、仏教の開祖である「お釈迦さま」の石像が、参拝する人々を静かに見守っています。優しい表情のお釈迦さまとは対照的に、周囲には「仏教の守護神」である四体の「四天王像(してんのうぞう)」が、とても怖い顔つきでお釈迦さまを守っています。

「お釈迦さま」の石像
Photo by Manabu Kato in May 21, 2018

また、お釈迦さまの近くには「仏足石(ぶっそくせき)」と呼ばれる、お釈迦さまの足跡に見立てて信仰すると伝わる石があります。

仏足石(ぶっそくせき)
Photo by Manabu Kato in May 21, 2018

あつい信仰心が感じられますね。

長谷寺が誇る紫陽花の散策路

さあ、初夏の長谷寺を代表する「あじさい路」へ入りましょう。

あじさい路
Photo by Manabu Kato in Jun 22, 2018

山の斜面に整備された散策路を歩けば、実に約40種類、2500株以上にも及ぶ、花の色も形も大きさも様々な紫陽花が、いっぱいいっぱい迎えてくれるでしょう。

紫陽花
Photo by Manabu Kato in Jun 22, 2018

青や紫やピンク…長谷寺の紫陽花

紫陽花
Photo by Manabu Kato in Jun 22, 2018
紫陽花
Photo by Manabu Kato in Jun 22, 2018

長谷寺の紫陽花は無限の色彩

紫陽花
Photo by Manabu Kato in Jun 22, 2018
紫陽花

初夏の長谷寺に咲く花たち

長谷寺には紫陽花の他、四季を通して様々な花が咲きます。初夏の花を少し紹介しましょう。

ウツギ(アジサイ科)

5月から6月に野山で見られる花、「卯の花(うのはな)」とも呼ばれています。

卯の花(うのはな)
Photo by Manabu Kato in May 21, 2018

イワタバコ(イワタバコ科)

5月から7月に湿った岩の上などで見られる花です。

イワタバコ
Photo by Manabu Kato in May 21, 2018

初夏の鎌倉ではイワタバコがあちこちで多く見られます。

初夏の長谷寺に咲く花たち

色も香りも様々な花たちは、紫陽花に負けず華やかです。

ニオイバンマツリ(ナス科)

庭木として植えられ5月から6月に開花、独特の香りがあります

ニオイバンマツリ
Photo by Manabu Kato in May 21, 2018

キキョウ(キキョウ科)

秋の花として有名ですが早い所では6月に開花します。白い花もあります。

キキョウ
Photo by Manabu Kato in Jun 22, 2018

キキョウの花言葉は「永遠の愛💛」

水辺に咲く花そして生物たち

スイレン(スイレン科)

各地の池や沼に夏から秋にかけて咲く花。漢字で書くと「睡蓮」。

スイレン
Photo by Manabu Kato in Jun 22, 2018

ショウジョウトンボ(トンボ科)

夏に現れる真っ赤なトンボです。

ショウジョウトンボ
Photo by Manabu Kato in Jun 22, 2018

いつも酒に酔って顔を真っ赤にしている、架空の動物「猩猩(ショウジョウ)」が名前の由来です。

これから夏そして秋にかけて、長谷寺はさらに多くの花が咲き競います。

聖地チベットから伝わった技術

「あじさい路」を歩き終えて竹林の横を抜けると、すぐ左側にお堂が建っており、中を覗くと、木で作られた何か大きな物体が真ん中にそびえ立っています。

これは「輪蔵(りんぞう)」と呼ばれるもので、中央より上部は「書架(しょか)…本棚」になっており、お釈迦さまによる仏教の教えをまとめた「一切経(いっさいきょう)…仏教の聖典」が納められた「経蔵(きょうぞう)」となっているのです。仏教を信奉する人々にとっては最も聖なる場所と言えるかもしれません。

輪蔵(りんぞう)
Photo by Manabu Kato in May 21, 2018

この「輪蔵」を、チベット仏教から伝わった「マニ車」という道具を使用して回転させることができるのです。

輪蔵を回転させることで、お釈迦さまの仏教の教えをすべて読み終えたと同じご利益が授けられると言われています。

観音さまの縁日に当たる毎月18日、お正月の3日間、お釈迦さまの誕生日とされる4月8日、8月10日に、堂内に18基設けられた「マニ車」によって回転できるようになっています。

さわる大黒さま、なごむお地蔵さま

長谷寺の旅も終わりに近づいてきました。再び「下境内」へ戻ります。放生池を左に見ながら少し行くと、右側に建つお堂。鎌倉七福神の一人「出世大黒天(しゅっせだいこくてん)」…大黒さまのお堂です。

堂内には「さわり大黒天」と呼ばれる大黒さまの像があり、手でふれるとご利益が得られるかも…。

出世大黒天(しゅっせだいこくてん)
Photo by Manabu Kato in May 21, 2018

大黒堂のすぐそばにたたずむ「和み地蔵」

和み地蔵
Photo by Manabu Kato in May 21, 2018

どうぞ思う存分いやされてなごみましょう。

軽い気分で入る者は許さぬぞ!!

大黒堂から少し奥まった所に「弁天窟(べんてんくつ)」と呼ばれる洞窟があります。七福神の一人である「弁財天(べんざいてん)…弁天さま」をお祀りする洞窟で、向かって右側が入口、左側が出口です。

洞窟の前には、厳しい顔つきをした「不動明王(ふどうみょうおう)像」が、「待て!!!」と言わんばかりに立ちはだかります。洞窟の中に邪気や悪者が入らないよう警護しておられるのでしょう。

不動明王(ふどうみょうおう)像
Photo by Manabu Kato in Jun 22, 2018

弁天さまは女神様です。心も体も清潔にして入りましょう。

入口
入口
Photo by Manabu Kato in Jun 22, 2018

いってらっしゃい

出口
出口
Photo by Manabu Kato in Jun 22, 2018

おかえりなさい

優しく気高く尊い弁天さま

洞窟内に入ると、雨を降らして穀物を育てる「宇賀神(うがじん)」という神様が、弁天さまに付き従う十六体の「童子(どうじ)」の像が岩壁に祀られています。奥へ行けば、参拝する人々がお賽銭を投じてゆく池、そして優しくほほえむ弁天さまの像が迎えてくださいます。

宇賀神(うがじん)
出典元:もぐまま様「長谷寺の洞窟『弁天窟』-マイ巡礼」より

「七福神」の中でただ一人の女神様である弁天さま。勉強の成果をあげる「学問」、財を成す「繁栄」、豊作をもたらす「五穀豊穣」のご利益を授かると伝えられます。

またいつも楽器の「琵琶(びわ)」をたずさえていることから「芸術の神様」とも呼ばれ、芸術や芸能関係の人々もこの場を訪れるようです。

人々の弁天さまへの想い

弁天窟内には、いくつかの小規模な洞窟が存在していますが、その一角に小さな弁天さまの人形がいっぱい並んでいる場所があります。人々がこの小さな人形一つ一つに願い事を書き奉納するのです。

長谷寺
Photo by Kentaro Ohno – 長谷寺

洞窟から外へ出れば、すぐ右側の壁に弁天さまの描かれた「絵馬」がずらりと掛けられています。

絵馬に願い事をするみなさまへ、洞窟へ入るみなさまへ

「木札にお名前とお歳を書き入れ、水で浄めて奉納してください

「天井が低い場所があるので、頭をぶつけないようご注意ください

長谷寺を歩き終えて

「この長谷寺紀行を記している最中の7月、西日本を中心とする大規模な豪雨災害が発生し、次々に明らかになる被害の状況に心痛める日々が続きました。犠牲になられた方のご冥福を謹んでお祈り申し上げますと共に、被災された皆様に心よりお見舞いを申し上げます。」

実は長谷寺の山の斜面にこれだけ多くの紫陽花が植えられているのは、土砂災害を防止する意味があるようです。紫陽花は決して大きな木ではありませんが、根がとても丈夫で強く、しかも土の中に深く広く伸びるので、山の斜面の土砂が動くのを防ぐ力があるのです。

紫陽花
Photo by Manabu Kato in Jun 22, 2018

青い海と緑深い山に日々向き合いながら、お釈迦さま、観音さま、お地蔵さま、阿弥陀さま、不動さま、大黒さま、弁天さまにいたるまで尊び敬いお祀りし、1300年以上に及ぶ歴史古い長谷寺を先人から受け継ぎ守りぬいてきた人々の、信仰の心と感謝の心が、色とりどりの紫陽花を育て、鎌倉に住む人々を自然災害から守ってきたのでしょう

今回の豪雨被災地に思いをはせれば複雑な気持ちになりますが、先人が育て上げた防災の知恵が、古都鎌倉の人々の生活をいつまでも支えているのです。

最後にもう一度海を…

あじさい路の上部から眺める三浦半島の海岸

あじさい路の上部から眺める三浦半島の海岸
Photo by Manabu Kato in Jun 22, 2018
あじさい路の上部から眺める三浦半島の海岸
Photo by Manabu Kato in Jun 22, 2018

それにしても、海へ流された観音さまが流れ着いた地にお寺が開かれたとは、何とロマンチックな物語でしょうか。こんなエピソードも、海にのぞむ鎌倉のお寺らしいエピソードですね。

観音さまが漂着した海岸も、今は多くのサーファーが、熱い夏を楽しんでいます。

インフォメーション

長谷寺グーグルマップ

今回、私が歩いたコースを紹介します

江ノ電長谷駅(5分)長谷観音前信号(2分)長谷寺山門前(1分)ふれ愛観音(2分)地蔵堂(2分)厄除阿弥陀如来堂(1分)かきがら稲荷(2分)観音堂前(1分)あじさい路入口(15分)輪蔵堂(2分)見晴らし台(1分)観音堂前(2分)地蔵堂(1分)放生池前(2分)弁天窟入口(3分)弁天窟出口(2分)放生池前(1分)長谷寺山門前(7分)江ノ電長谷駅

(見学時間、休憩時間等は省く)

長谷寺

  • 開門時間 夏期(3月~9月)…8時00分~17時00分(閉門17時30分)、冬期(10月~2月)…8時00分~16時30分(閉門17時00分)
  • 拝観料 大人(中学生以上)300円、小人(小学生)100円
  • 詳細は「長谷寺ホームページ」をご覧ください。

お食事処 海光庵

長谷寺上境内の西側、見晴らし台のすぐ右側にあり、「輪蔵堂」のすぐ前が入口です。

肉類を使用しない「精進料理」を見本に作られたカレーライスやパスタ、うどんなどメニュー豊富。和風スイーツやドリンクも多種多彩です。

  • 営業時間…10時00分~16時00分
  • 電話…0467-22-6300
お食事処 海光庵
Photo by Manabu Kato in Jun 22, 2018